ライフ

就活報道 メディアの「かわいそう」は本当にいい加減と専門家

2012年の就活・雇用はどうなるのか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏が新年の展望を語る。

* * *

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

2012年の展望ですが、今年こそ「就職氷河期」という言葉が死語になって欲しいですね。新卒採用をめぐる求人は回復の兆しがあります。

リクルートが2011年12月に発表した「ワークス採用見通し調査(新卒:2013年卒 中途:2012年度)」によると、2013年卒対象の大学生・大学院生の新卒採用見通しは、「増える」が10.4%、「減る」が6.4%で、「増える」が「減る」を4.0ポイント上回りました。

「増える」と「減る」の差の推移を見ても、2012年卒に続き明確に回復傾向です。25.1%が「わからない」と答えていますし、国内外ともに政治・経済の不安要素を残しており、結果がどうなるかは分かりませんが。ただ、各社のデータでも体感値でも回復傾向が見られるのは確かです。

でも、就職難は解決されるのでしょうか? おそらく解決しないでしょう。現在は「就活格差」時代であり、学生と企業の能力と志向のミスマッチが激しい「就活断層」時代だと私は言い続けてきたわけですが、流行語大賞になった「就職氷河期」ほど、流行らなかったわけですよ。

ただ、この「就職氷河期」という言葉、インパクト十分な言葉なわけですが、メディアは何でも「就職氷河期再来」と報道し、学生も「就職氷河期だから」と自分に同情するわけですが、現実を見て欲しいわけです。求人数が回復し、でも就職できないという状態になったときに、就職氷河期という言葉が死語になることでしょう。

就職難に関する報道は、本当にいい加減です。とにかく若者のかわいそうな状況を伝えようとするわけで。昨年、発表された文部科学省と厚生労働省による平成23年度「大学等卒業予定者の就職内定状況調査(2011年10月1日時点)においても、2012年卒の10月1日時点での内定率は59.9%で過去ワースト2だったと報じました。ワースト2は事実ですが、10年卒、11年と下降を続けた傾向に歯止めがかかり、上昇に転じた方がニュースだと思うのですが、かわいそうな方向でメディアは報道するわけですよ。

そういえば、数年前ですが日本を代表する朝のワイドショーから電話があり、ディレクターに30分、新卒採用のことをイチから教えた挙句、「常見さん、もっとかわいそうなことを言ってくれたら、テレビに出れますよ」と言われたことがありました。ウソはつけないので「断る力(笑)」を発揮しようとしたら、その前に話が流れましたが。

また、就活悪者論がやや暴走気味になり、就活さえ、新卒一括採用さえなくなれば皆が幸せになれるかのように議論がすりかわってきました。就活の見直しいうといつも「時期」の問題に議論はすりかわり続けています。さらには、「学業阻害」という大義名分のもと、大学やその教職員は自分のことを棚にあげて就活を批判してきました。

じゃあ、就活がなくなったら学生は幸せになるのか? 日本の大学はそんなに立派なのか? これが問われていく1年になるでしょう。そして、企業と学生の出会い方、新しい働き方、学び方が問われる1年になるでしょう。

というわけで、「就職氷河期」という言葉に死語になり、就活悪者論ではなく大学悪者論が盛り上がる1年になるでしょう。あと、新しい働き方を模索する年になるんでしょうけど、保守回帰も起こるでしょうねぇ。そんな1年ですが、空気読まず今年も主張していきたいと思います。自分自身も新しいチャレンジをしていきたいと思います。今年も夜露死苦お願いします!

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト