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“平成の阿部定”事件 「覚醒剤反応が出た」と捜査関係者語る

やれ“平成の阿部定”か、と世間を騒がせた怪死事件が意外な展開を迎えている。

東京・昭島市のアパートでタクシー運転手・矢口行さん(49)が、首、左胸、腹に複数の刺傷の上、陰部が切り取られた状態で発見された事件。第一発見者によると現場は血の海で、矢口さんは布団が敷かれていないパイプベッドの上に大の字で倒れていたという。

さらに陰部はベッド付近に落ちており、隣の洋間から包丁が発見された――。

死因は出血性ショック。警察は陰部などの出血が少ないことから死後切断されたと考え、他殺の線を疑っていた。性交中に愛人を扼殺し、陰部を切り取ったという1936年の阿部定事件を彷彿とさせるが、捜査関係者の一人は声を潜めていう。

「鑑識の結果、犯人がいたらあるはずの矢口さん以外の足跡が認められなかった。さらに他室に血痕が残り、遺体の足裏に血が付着していた状況から判断すると、矢口さんは自ら体を傷つけ、その後しばらく部屋を歩いていたと考えられます。つまり自殺の可能性が高いのです。傷口が利き手の届く範囲にあり、防御創がなかったのもそれを裏付けています」

ならば局部も自ら切り取ったということである。別の捜査関係者が語る。

「まだ正式な鑑定結果こそでていないが、体内から覚醒剤の陽性反応が出ている。痛みが麻痺していた状況なら、自傷も考えられる」

多くの鑑識経験を持つ検視官によると、こうした凄惨現場も稀にあるようだ。

「心理状態に著しい乱れがある場合、こうした自傷行為が見られます。私は、全身を100か所近く切り刻んだ自殺現場を見たこともある。それは家族とのトラブルがもとで精神が追い詰められた末の自殺でした」

※週刊ポスト2012年2月3日号

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