国内

日本は我儘な1人が反対すれば99.999%が賛成でも決定できぬ

 東アジアの国際ハブ空港は韓国の仁川空港である。だが実は、仁川空港の開港は2001年、成田空港の開港の23年後であった。成田が国際ハブ空港に成り得なかったのは24時間空港でないことも理由なのだという。本来、東アジア最大の経済大国であった日本の国際空港が(しかも韓国よりも昔から存在した)、なぜハブ空港に選ばれず、こんなことになったのか? 作家・井沢元彦氏が解説する。

 * * *
 物事には必ず理由がある。そして日本以外の国で、こんな間抜けな事態が起こりうるとは到底考えられないから、これは日本人の特質および日本の文化に原因があることは火を見るより明らかだろう。

 こう考えてみよう。日本のなかで成田空港に徹底的に反対している人間は一体どれぐらいいるだろうか? 仮に日本の人口を1億人としようか。反対者は絶対にこんなにたくさんはいないと思うが、仮に4999万9999人が反対だったとしても、残りの5000万0001人が賛成すれば成田はハブ空港になれるのである。

 当たり前の話だ。民主主義の原則は過半数で基本的なことが決められるからである。しかし日本ではいまだに決まらない。こんなにたくさん反対派が存在するはずがないのに。

 仮に1000万人の反対者がいたとしても、あるいは2000万、3000万反対者がいたとしても、比率に直せば9対1、8対2、7対3であっても外国ならば圧倒的多数で可決されましたと報道されるところだろう。お分かりだろうか、日本はそうした多数決の原則がまったく機能していない国なのである。

 ここで中高年の人ならば、かつて美濃部亮吉東京都知事が提唱した「橋の哲学」を思い出すのではないか。民主主義国家の政治家が「たとえ一人でも反対者がいたら橋を架けない」などということを公言し、マスコミもそれをほめそやした時代があった。

 日本は極端に言えばたった一人のわがままな人間がいるために、99.999%の日本人が熱望していることでも決められないという、恐るべき国家なのである。それは成田問題がなによりも明確に証明している。

 したがって政治家としてしばらく実務を経験した人間ならばこの恐るべき事態に気づき、必ず橋下徹大阪市長のように「こんなやり方では日本は沈没する」と言うはずなのだ。それなのにこんなことを言う政治家はほとんどいない。こういう事態にまったく気がついていないか、分かっているが反感を買うので黙っているか、そのどちらかであろう。前者なら間抜け、後者なら臆病者ということになり、いずれにしても政治家としての資質に欠けると言わざるを得ない。

※SAPIO2012年5月9・16日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
ジャンボな夢を叶えた西郷真央(時事通信フォト)
【米メジャー大会制覇】女子ゴルフ・西郷真央“イップス”に苦しんだ絶不調期を救った「師匠・ジャンボ尾崎の言葉」
週刊ポスト
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
前回のヒジ手術の時と全く異なる事情とは(時事通信フォト)
大谷翔平、ドジャース先発陣故障者続出で急かされる「二刀流復活」への懸念 投手としてじっくり調整する機会を喪失、打撃への影響を危ぶむ声も
週刊ポスト
単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
NEWSポストセブン