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吉行和子 他の女優への競争心や嫉妬ない質素な性格と自己分析

「撮影の頃は、なでしこジャパンが頑張っていたでしょう。暑いけど私たちも頑張らなきゃって、一生懸命だったの」

 主演映画『人生、いろどり』(9月15日公開)の撮影を語る吉行和子(77才)の表情には、楽しさがあふれている。

 ロケが行われた徳島・上勝町が物語の舞台だ。ある年の冬、特産のみかんが全滅し、町はどん底に陥る。この苦境をなんとか救おうと若い農協職員・江田(平岡祐太)は、料理の彩りに使う“つまもの”と呼ばれる葉っぱを商品化することを思いつく。

 その呼びかけに応えたのが、吉行演じる薫、花恵(富司純子)、路子(中尾ミエ)という幼なじみたち。

 実話をもとに、農家のおばあちゃんたちの奮闘を、豊かな自然を背景に、丁寧に、明るく描いた映画が本作だ。

 それにしても、この映画での吉行の活躍はまぶしいばかりだ。葉っぱをとるための樹を育てているビニールハウスが火事だと知らされ、農道を走るシーンでは、全力疾走。

「ビニールハウスのかなり手前から全速力で走ったんです。でも、そのシーンはちょっとしか使われなかったの。監督さんはたくさん走らせておいて、“よくやりますね”ですって(笑い)」(吉行・以下同)

 私生活では体力づくりなんて全くせず、横断歩道を歩いていて信号が変わりそうなときに、申し訳程度に小走りするだけなのに、と笑いながら打ち明ける。

 また、富司と口げんかをしたあげく、泥の投げ合いになり、お互いに顔を泥まみれにする場面もある。ともに熱演とか力演というのではなく、上勝の風景に溶け込み、農家のおばあちゃんになりきって、自然にリアルに演じているのが、見ていて気持ちいい。

 映画の中の女性たちは、葉っぱを採集し、それを売って現金収入を得ることで、生きがいを見出し、強くイキイキと変化していく。その姿は女優としていつまでも輝く吉行の姿に見事に重なっている。

「映画を見てくださったかたが、“お年寄りの女性たちが、元気で頑張っているその姿を見て、自分も励まされた”と言ってくださるのがうれしいわ」

 そういう吉行自身、1957年に『アンネの日記』で初舞台を踏んで以来、女優としての長いキャリアを誇る。

「いくつになっても役の需要があるということでは、女優という仕事を選んだことはよかったなあと思っています。仕事は人生を鮮やかに彩ってくれるもの。いくつになっても必要なのかもしれませんね。

 映画は見るのもやるのも好きなの。でも、若いときから、きれいに映りたいと思ったことはないんです。その時々、年相応でいい。だから、常にきれいに映らなければならないと演じてきたスター人生より、うんと楽なんです。年をとったら年をとったままでいいんですもの。私にとっての年齢なんてそんなものなんです」

 と、おっとりした笑顔で笑う。

 ほかの女優への競争心や嫉妬心もまったくなければ、「あれがほしい、これがほしいという欲もない。質素な性格ですね」とみずからを分析。こうだったからこそ、現在まで健康や出会いに恵まれ、やってこられたと考える。

「もともと私はぼーっとした人間(笑い)。水でもぶっかけられたら、そりゃ怒りますけど、意地悪や陰口も、言葉でいわれるだけならそれほど気にならないの。“あなた、こんなにひどいこといわれているのよ。怒らないの?”って、友達が代わりに憤慨してくれるんです」

 主役の座をめぐって意地悪をしたり、火花を散らす人がいると、「なんでこんなに意地悪ができるのかしら」と興味津々で観察し、その人となりを研究して、自分の役作りに生かしてきたという。

「心の中はいつも自由で、自分に正直に生きていたい。そういうチェックは日々しています。いただいた役を嘘くさくなく、やるためにね」

※女性セブン2012年9月27日号

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