ライフ

成績不振により上司から暴力 どうすれば会社を辞められるか

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「成績不振で上司が暴力。どのようにすれば会社を辞められるか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 会社をリストラされ、新聞広告を見て、今の訪問販売会社に勤めることに。入社の際、最低3年間は勤めるという覚書のようなものを交わしました。しかし成績は思うように上がらず、上司からも暴力を受けました。すぐに辞表を提出しましたが、覚書を盾に応じません。どうすれば会社を辞められますか。

【回答】
 勤務後の経過年数で、違います。労働基準法第14条で、専門知識をもつ者や60歳以上の雇用の場合以外、期間付雇用契約の期間上限を3年としているので、最低3年間勤めるとの覚書は有効です。しかし同法第137条は、上の特例や工期中の継続雇用が必要な場合を除き、労働者は1年を経過すれば、いつでも退職できることにしています。

 これは労働者を拘束すべきではないとの人権尊重の発想に基づきます。もし、1年経過していれば辞表は有効で、離職手続きを申し入れ、応じないときは労働基準監督署に指導を要請するのがよいでしょう。1年経過前だと、簡単ではありません。辞職は、雇用契約の合意解除の申し入れで会社が応諾しないと、効力が生じないからです。

 労働者が一方的に辞職できるのは、【1】使用者側の債務不履行により雇用契約を解除できる場合。【2】民法第628条の「やむを得ない事由」がある場合です。【1】は、賃金不払いなどがその典型で、催告しても支払わなければ、契約解除の意思表示をすることで、雇用契約を終了させられます。

【2】の「やむを得ない事由」とは、「雇用契約の目的を達成できない重大な支障」、「雇用契約を継続させることが著しく不当または不公平となる事由」等とされ、雇用契約を終わりにできます。しかし、その原因が労働者にある場合は、辞職したことで使用者に発生した損害の賠償責任を負います。

 ご質問の場合、上司の暴力行為が辞職希望の理由の一つであり、業務の過程で発生したものです。再発の心配があれば、職場の環境が安全ではないと考えられ、労働者は賠償責任なく辞められます。会社が不満に思っても、職場の暴力は弱みになります。問題はその程度と立証です。労働問題に明るい弁護士への相談を勧めます。

※週刊ポスト2012年11月23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された愛子さま(2025年5月8日、撮影/JMPA)
《初の万博ご視察》愛子さま、親しみやすさとフォーマルをミックスしたホワイトコーデ
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン