円高が続き、海外旅行先での買い物もいいが、旅行するには時間も必要――ということで、通販での個人輸入や海外オークションを活用する人が増えている。最近は日本語に対応したサイトやサービスも多く、輸入品を日本の店舗で購入するより安いケースや、日本未発売の商品が手軽に買える。
見たこともない珍しいアイテムや、国内ではあまりないタイプのデザインなど、チェックするだけでも楽しい。その一方で「トラブルがあったら、対応できないかも」と不安に思ったり、日本の通販サイトと全く同じようなつもりで取引きをして、商品到着までにかかる時間などに違和感を覚えてしまう人もいる。しかし賢く使えば、おトクなことも多い個人輸入や海外オークション。どういうところに気をつければ、いいのだろうか?
イギリスへヴィンテージアイテムを買付けに行き始めて20年、アート・ディレクションの仕事をしながら、ヴィンテージ商品の販売業も手掛ける古谷優子さんは、個人輸入や海外オークションを楽しむコツと注意点は3つあるという。
【1】ジャパニーズ・クオリティを求めない
「まず自覚すべきなのは、世界でもトップクラスと思われる、日本人の品質に対するレベルの高さですね。高級ブランド品などは別にして、海外ではパッケージの箱が凹んでいるとか、パッと見では分からない程度の“柄合わせ”のズレなんかは、全然気にしないケースが多い。また日本人の品質へのこだわりが極端な例としては、ヴィンテージやアンティークの商品を買いに来たのに、“キズ”や“色褪せ”といった“味わい”のポイントに『不良品だ』となることもあるようです(笑)。
アンティークはそうした“味わい”に価値がありますし、新品でもちょっとした不備なんかは、予め“そういうもんだ”と思って、日本製品と同じクオリティは求めない……むしろ“このズレはOKなのかー”というのを楽しむ方が、個人輸入や海外オークションの醍醐味が味わえると思いますよ。そういう感覚でいれば、すごく状態の良い商品が届いた時の喜びも大きいですから」
商品の品質だけでなく、海外旅行先のサービスに、時として“日本だったら、もっとちゃんとしているのに”と思うことがある。しかし日本のサービスと比較して嘆くのではなく、旅先でのおもしろいハプニング“ネタ”と捉えてしまった方が、イライラするよりも旅が豊かになる――というのと同じことのようだ。
【2】旅費や手間を考えたら、送料・手数料は安い
「よく日本と現地での販売価格を比較して、“すごく利益を取っている”と言う人もいますが、現地で買うには旅費や良い商品を探す手間がかかります。そうした時間やコストを考えると、通販やオークションでの実質購入金額以外にかかる送料や手数料って、本当はかなり安いんです」(古谷さん)
通販や法人出品であればメーカーなどが直接商品を発送するため、手数料もさほどかからないケースが多いが、オークションで出品者が個人の場合は、海外取引きに限らず“届いた商品を見るまでは、不安”という人もいるだろう。
海外オークション大手eBay(イーベイ)の日本向け公認サービスを展開する「セカイモン」の場合、アメリカならLA、イギリスではロンドンに専用デポがあり、落札商品に間違いや齟齬がないかを確認の上で発送するなど、CtoCの取引きにも安心な仕組みになっている。また送料も一般の個人が利用するより安めの設定だ。
【3】皮革製品など関税に注意
一般的にはピンとこない関税だが、「日本の場合は革製品などの関税が高いので、注意が必要」と古谷さんはいう。特に革靴は「関税は価格の30%または4,300円/足のうちいずれか高い方」となっており、円高差益などで割安に買ったつもりが“これなら日本のお店で買った方が、安かった”となるケースも。
皮革製品のほかには、ストッキングやタイツ・ニット製衣類などに関税税率が高めのものがあるなど、一般のユーザーが網羅的に把握することが難しい領域もある。「使われている素材などもチェックして、税率を調べるのは面倒……」といった人は、関税なども含めて見積りが表示されるサイトを利用するといいだろう。