国内

光ディスク修復装置の世界シェア90%企業 鹿児島の町で奮闘

「光ディスク自動修復装置」のエルムの宮原隆和社長

 長らく不況が続き、「ものづくり立国」と呼ばれた日本大手メーカーは、海外のメーカーの攻勢に苦しんでいる。だが、落胆するのはまだ早い。大企業の失速を尻目に、日本には小さくてもシェア世界一の企業が、100社以上もあるのだ。世界を席巻する「町工場」のオンリーワン技術にこそ日本復活のヒントが隠されている。

 全自動で同時に複数のDVD、CDを研磨、高速修復できる『エコスーパー』。500枚を125分で修復可能で主に海外で流通している。大阪で技術者として働いていた宮原社長は29歳のときに故郷・鹿児島に帰り起業。「鹿児島から世界へ」という理念でやってきた。鹿児島空港から車を飛ばすこと1時間15分。東シナ海と畑に囲まれた片田舎の会社に、オファーが殺到している。世界37か国から発注の連絡だ。

 DVDやCDの研磨、修復をする全自動装置で世界トップシェアを誇るのが鹿児島県のエルム。宮原隆和社長(61)がいう。

「もともとキンカンを自動でネットに詰める機械や海苔の選別機などを作っていた地方の企業です。それが、このディスク修復装置開発の依頼から変わった。ちょうどレンタルショップの主役がVHSからDVDに置き換わる頃だったので、マーケット的にも非常に有望でした」

 当時、市場に出ていた修復装置は専門家の操作が必要で研磨も粗く、ディスク1枚あたり5回程度の修復にしか耐えられなかった。しかし、エルムの装置はミクロンレベルでの微細な研磨が可能で、20回程度の修復ができる。全自動なのでアルバイトでも高速に処理できることも従来品を駆逐した要因だった。

「南さつま市は鹿児島でも過疎地。開発の段階で安易に他社に頼れないことが、うちの技術革新につながったんだと思います」

撮影■高橋宏幸

※週刊ポスト2013年2月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン