ライフ

マスコミが在日に支配されていると信じるネット右翼を知る書

【書評】『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(安田浩一、山本一郎、中川淳一郎著/宝島社新書/800円・税込)

 * * *
〈グーグル検索で「中川淳一郎」と打てば、予測変換に「在日」と出る〉と、中川淳一郎(ネットニュース編集者)が書くように、安田浩一(ジャーナリスト)、山本一郎(ブロガー)、中川はいずれもネット上でネット右翼から激しく攻撃されている。彼ら3人は、「嫌韓」を特徴のひとつとするネット右翼に対する批判を繰り返しているからだ。

 本書はその3人の書き下ろし原稿と鼎談からなる。安田は「街に出たネット右翼」と呼ばれる「在特会(在日特権を許さない市民の会)」のメンバーとのやり取りを描き、彼らの心の内実に迫る。安田は忍耐強いが、やり取りは絶望的である。中川は自らが身を置くメディアの現場を説明し、ネット右翼がしばしば持ち出す「マスゴミの反日陰謀論」を一笑に付す。

 陰謀論は実に荒唐無稽である。自分の人生が恵まれていないのは在日韓国・朝鮮人が不当、不正に特権を享受しているからであり、マスコミはその「在日」に支配されているというものだ。そして彼らは、ネットに流れる情報によって初めてそうした「真実を知った」と考えている3者が共通して指摘することだ。

 馬鹿馬鹿しいと笑うのは簡単だ。だが、「親韓」だとしてネット右翼に抗議された企業の売り上げは落ち、大量の「電凸」(電話による抗議)に悩まされた。その影響力は無視できないところまで拡大している。山本はパネル調査により、ネット右翼の定量分析や海外との比較などを行なっているが、それによると、“ネット右翼予備軍”は最大120万人と推定される。

 社会の一角を占めるようになったネット右翼を知る入門書として最適だ。

※SAPIO2013年4月号

関連記事

トピックス

現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
ファッションの面でも注目を集めている愛子さま(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《公務でのご活躍続く》愛子さまのファッションに感じられる“母・雅子さまへのあこがれ”  フェミニン要素で“らしさ”もプラス
NEWSポストセブン
Mrs.GREEN APPLEの冠番組『テレビ×ミセス』(TBS系)が放送される(公式HPより)
《ミセスがテレビに進出!》冠番組がプライム帯で放送される3つの必然性 今後、バラエティ進出が拡大する可能性も
NEWSポストセブン
5月20日の公務での佳子さま(時事通信フォト)
《第一子出産で注目》佳子さま、眞子さんの“お下がりファッション”ブランドは「ご家族で愛用」背景にあった母・紀子さまの影響【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットの幸せな日々》小室眞子さんは「コーヒー1杯470円」“インスタ映え”カフェでマカロンをたびたび購入 “小室圭さんの年収4000万円”でも堅実なライフスタイル
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン
常盤貴子が明かす「芝居」と「暮らし」の幸福
【常盤貴子インタビュー】50代のテーマは「即興力」 心の声に正直に、お芝居でも日々の暮らしでも軽やかに生きる自分でありたい
週刊ポスト
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
ホストにハマったAさんが告白する“1000万円シャンパンタワーの悪夢”「ホテルの部屋で殴る蹴るに加え、首を絞められ、髪の毛を抜かれ…」《深刻化する売掛トラブル》
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
〈ちゅーしたら魔法かかるかも?〉被害女性が告白する有名ホストクラブの“恐ろしい色恋営業”【行政処分の対象となった悪質ホストの手練手管とは】
NEWSポストセブン