芸能

『タモリ論』著者 「彼の狂気を皆さんに知ってほしかった」

『さらば雑司ヶ谷』や『民宿雪国』などの小説で知られる作家・樋口毅宏氏が書いた『タモリ論』(新潮新書)が話題だ。発売1週間で6万部を超えるベストセラーとなっている。

 なぜ敢えてタモリについて論じようと思ったのか。樋口氏が語った。

 * * *
 1971年生まれの僕より若い世代の多くは、タモリや『笑っていいとも!』について、「どこが面白いのかさっぱりわからない」といいます。

 確かに、僕もかつて、「テレフォンショッキング」というコーナーの冒頭で、タモリがスタジオを観覧している客に何か尋ねると、客がそのたび声を揃えて「そうですね!」というやり取りを、いかにも馴れ合いで不毛な予定調和だとバカにしていました。

 一方で、40代を過ぎた上の世代のタモリ好きは、イグアナの物真似や4か国語麻雀といったアングラ芸を挙げて、「『いいとも!』以前のタモリはすごかった」と口を揃えます。

 僕は『いいとも!』のタモリを論ずることで、両者の橋渡しをしたいと考えました。

 4年前、徳光和夫が『いいとも!』に出演した際、「タモリさんはいつから飄々となったんですか? タモリさんって割と、深夜向きのタレントさんで結構過激なことをやってらしたんですよ」というと、タモリが「いまでいうと江頭2:50がやるようなもん(笑い)」と答え、観客が驚きの声をあげる場面がありました。

 深夜番組担当のアングラ芸人を自認していたタモリが、突然の抜擢によって毎日数百万人が視聴する生放送の司会を引き受け、それを30年以上も続けている。まともな人ならとっくにノイローゼになっていますよ。

 でも、タモリは狂わない。それは一体なぜなのか。そして一つの答えに行きつきました。

 タモリは、自分にも他人にも何一つ期待していないのです。タモリは、すべてに「絶望」している。その絶望を引き受けながら『いいとも!』の司会をし続ける彼の狂気を、みなさんに知ってほしかった。

※週刊ポスト2013年8月9日号

関連記事

トピックス

米倉涼子
《新情報》イベントのドタキャン続く米倉涼子を支えた恋人の外国人ダンサー、日本を出国して“諸事情により帰国が延期”…国内でのレッスンも急きょキャンセル 知人は「少しでもそばにいてあげて」
NEWSポストセブン
約250人が列席した。大山さんが好きだった紫と白の花が飾られた祭壇の前で挨拶をする毒蝮三太夫さん(左)と十朱幸代さん
《大山のぶ代さん、一周忌追悼》26年間親しまれた、あなたの「ぼく、ドラえもん」を忘れない
週刊ポスト
出世街道を突き進む二所ノ関親方
《相撲協会、理事選のゆくえ》大の里の横綱昇進後初Vで注目が集まる二所ノ関親方の出世街道、飛び級で抜擢の可能性も ライバルだった元横綱・白鵬が退職したのも追い風
週刊ポスト
小川晶市長“ホテル通い詰め”騒動はどう決着をつけるのか(左/時事通信フォト)
《前橋・小川市長 は“生粋のお祭り女”》激しい暴れ獅子にアツくなり、だんベぇ踊りで鳴子を打ち…ラブホ通い騒動で市の一大行事「前橋まつり」を無念の欠席か《市民に広がる動揺》
NEWSポストセブン
歴史ある慶應ボート部が無期限で活動休止になったことがわかった(右・Instagramより)
《慶應体育会ボート部が無期限活動休止に》部員に浮上した性行為盗撮疑惑、ヘッドフォン盗難、居酒屋で泥酔大暴れも… ボート部関係者は「風紀は乱れに乱れていた」と証言
NEWSポストセブン
元大関・貴景勝
断髪式で注目の元大関・貴景勝 「湊川部屋」新設に向けて“3つの属性の弟子”が混在する複雑事情 稽古場付きの自宅の隣になぜか伊勢ヶ濱部屋の住居が引っ越してくる奇妙な状況も
NEWSポストセブン
京都を訪問された天皇皇后両陛下(2025年10月4日、撮影/JMPA)
《一枚で雰囲気がガラリ》「目を奪われる」皇后雅子さまの花柄スカーフが話題に 植物園にぴったりの装い
NEWSポストセブン
本誌直撃に“対立候補レンタル”を否定していた田中甲・市長(左)
《音声入手スクープ》市川市の田中甲・市長、市長選で“ダミー対立候補レンタル”の証拠音声 「もう一人立てましょう」「それ込みで2000万円渡した」
週刊ポスト
香川県を訪問された秋篠宮妃紀子さまと次女・佳子さま(2025年10月3日、撮影/JMPA)
《母娘の秋色コーデ》佳子さまはベージュ、紀子さまはホワイトのセットアップ アクセサリーはパールで共通もデザインで“違い”を見せられた
NEWSポストセブン
イベントの“ドタキャン”が続いている米倉涼子
《女優・米倉涼子に異変》体調不良でイベント“ドタキャン”が相次ぎ…8月からインスタの更新はストップ「お答えいたしかねます」回答
NEWSポストセブン
永野芽郁に業界からラブコール
《金髪写真集をフィリピンで撮影済み》永野芽郁、すでに民放キー局から「連ドラ出演打診」も…今も業界から評価される「プロ意識」
NEWSポストセブン
“ラブホテル通い”を認めた小川晶・前橋市長
《前橋市長が利用した露天風呂付きラブホ》ベッド脇にローテーブルとソファ、座ると腰と腰が密着…「どこにどのように着席して相談したのか」疑問視される“部屋の構造”
週刊ポスト