芸能

草刈正雄「こういう顔なので時代劇出演は無理と思っていた」

 かつてはブロマイドの売上1位を記録し、二枚目の代名詞となっていた俳優、草刈正雄もいまでは、野心的な悪役やコミカルな役柄など、脇役として幅広く活躍している。だが若いころは、日米ハーフで彫りが深いみずからの顔立ちのために演じられる役柄に限界があると思っていたと草刈が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が解説する。

 * * *
 1990年代以降の草刈は、大河ドラマ『花の乱』『毛利元就』での野心的な悪役やテレビドラマ『イグアナの娘』『南くんの恋人』でのヒロインの父親役など、脇に回って幅広い役柄を演じ、新たな魅力を発揮してきた。草刈は以下のように語る。

「若い頃に求められた二枚目ではない、そこから離れた役を演じることに興味があるんですよ。悪役も、コミカルな役も。

 時代劇は僕自身が好きというのもあります。お芝居をしている感じがあるので。それに、こういう顔をしているから時代劇は無理だと思っていたら映画『沖田総司』に出た時、違和感がなかった。それで『心は日本人なんだ』と思えたんです。

 ただ、主役から脇に回る境目の時は苦しみました。いつもなら僕に来るはずの役が違う人に行ってしまっていましたから。でも、それが過ぎると今までと違った役も来るようになる。その時に自分の精神的なコントロールができ始めたことで、苦しみから抜け出せました。

 主役をしている時は全てを背負っている意識があって、身動きできませんでした。それが脇に回ると楽しめそうな、弾けそうな気がして、いろいろと新たに発見することもあります。

 とにかく自分が楽しんでいないと、見る人も楽しめない。そう思ってやっていますが、なかなか楽しめないんですよね。

 大滝秀治さんも『僕は仕事を楽しんだことはない。苦しみだけだ』とおっしゃっていましたが、それがよく分かります。俳優座劇場の楽屋裏で大滝さんがお祈りしている写真を見たことがありますが、『ああ、俺と一緒だ。みんな苦しんでいるんだ』と思いました。僕も舞台に出る前はお祈りをしていますが『ああいう立派な俳優さんでも、そうなんだ』と。役者として食っていけるのか、この歳になっても自信を喪失することがあります」

※草刈正雄は11月28日より、ミュージカル『クリスマス・キャロル』に出演。東京・シアター1010、神戸・新神戸オリエンタル劇場など全国で公演予定。詳細はスイセイ・ミュージカルまで。

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が11月14日に発売。

※週刊ポスト2013年11月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
大の里の調子がイマイチ上がってこない(時事通信フォト)
《史上最速綱取りに挑む大関・大の里》序盤の難敵は“同じミレニアム世代”の叩き上げ3世力士・王鵬「大の里へのライバル心は半端ではない」の声
週刊ポスト
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎ストーカー殺人事件》「テーブルに10万円置いていきます」白井秀征容疑者を育んだ“いびつな親子関係”と目撃された“異様な執着心”「バイト先の男性客にもヤキモチ」
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《田中圭との不倫疑惑》永野芽郁のCMが「JCB」公式サイトから姿を消した! スポンサーが懸念する“信頼性への影響”
NEWSポストセブン
騒然とする改札付近と逮捕された戸田佳孝容疑者(時事通信)
《凄惨な現場写真》「電車ドア前から階段まで血溜まりが…」「ホームには中華包丁」東大前切り付け事件の“緊迫の現場”を目撃者が証言
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
食物繊維を生かし、健全な腸内環境を保つためには、“とある菌”の存在が必要不可欠であることが明らかになった──
アボカド、ゴボウ、キウイと「◯◯」 “腸活博士”に話を聞いた記者がどっさり買い込んだ理由は…?《食物繊維摂取基準が上がった深いワケ》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
NEWSポストセブン