ビジネス

ブラック企業の見分け方 かなり出来がいいガイドありと識者

 今年の流行語大賞から漏れはしたが、「ブラック企業」ほど今年浸透した言葉もないだろう。しかしその定義となると案外難しい。コラムニストのオバタカズユキ氏が考察する。

 * * *
 さきごろ「2013 ユーキャン新語・流行語大賞」が発表された。年間大賞に選ばれたのは、「今でしょ!」「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」の4つ。たしかにそれらは大流行した。しかし、2013年という年はそこまで軽くて明るく元気だったか。ちょいと疑問だ。

 トップテン入りして受賞を逃した新語に「ブラック企業」がある。重くて暗く憂鬱な言葉だけれども、その手も1つぐらい混ぜたほうがリアルではないか。私はそう思った。ただし、問題なのはこの新語が流行語ではない点だ。実際の落選理由は知らないが、「ブラック企業」は来年も再来年も、おそらくは10年後も日常的に使用される。残念ながら、おそらくこの国に定着する構造を指す。すでに使うと恥ずかしい「今でしょ!」とは違う。

 このやっかいな「ブラック企業」に関して、大賞発表の少し前に注目すべき動きがあった。学者や弁護士などによる「ブラック企業対策プロジェクト」という任意団体が、『ブラック企業の見分け方~大学生向けガイド~』を作成したのだ。A4計64ページからなる冊子で、その出来がかなりいい。しかも定価0円で、PDFファイルのダウンロードが自由なのだ。

 検索すればすぐに出てくるので、プリントアウトの上、ぜひ熟読されたい。想定読者は題名通りに、自分の就職先がブラック企業になることを心配する大学生なのだが、私は人事担当や広報担当など企業の中の人にもお勧めする。多くの企業の人たちが、「ブラック、ブラックうるさいな~。その言葉が広まったおかげで採用活動がやりにくいんだよ!」と苛立っていることは知っている。だからこそ、お目通しいただけたら良いと考える。

「ブラック企業」とは何か。定義をめぐる議論はいろいろあるが、この冊子の著者の一人でもある今野晴貴氏がよく使うフレーズを借りれば、「若者を使い潰す」企業のことだ。そして、少なからずの企業が「うちは使い潰してなんかいない。なのに『御社はブラックですか?』と言わんがばかりの就活生が最近増えて……」と戸惑っている。ここ最近の就活生が最も気にしていることは、貴社がブラック企業か否かだ。

 ならば、プラグマティックにそう勘ぐられないような対策をとればいいと思うのである。後ろめたいところがないのなら、へんに誤解されないためにも、「ブラック企業の見分け方」を知り、ブラック企業に見られない方法を検討してみたらいかがだろう。

 冊子は、このウェブマガジンでもおなじみの常見陽平氏の「求人広告から見分ける――気をつけておきたいブラック企業の兆候」から始まる。ついついはしゃぎがちなオヤジ文体は封印し、人事と教育のプロとして、粛々と「見分け方」を記述している。

 常見氏によれば、例えば、就職ナビの求人広告で「社長の経歴の誇張」をしている企業には気をつけろとのこと。〇〇社在籍中に全国トップのセールスをあげて、といった調子でプロフィールがやたらに濃い社長紹介のことだ。もし貴社の求人広告がそうなっていたら、「自粛」したほうがいいだろう。私の経験則から言うと、社長の人物像がまったく見えない求人の場合もヤバい会社であることが多い。逆にドカーンと社長の写真が掲載されているケースもヤバめ。何事もほどほどがいいのだ。

関連記事

トピックス

お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
『サ道』作者・タナカカツキ氏が語る「日本のサウナ60年」と「ブームの変遷」とは
《「ととのった〜!」誕生秘話》『サ道』作者・タナカカツキ氏が語る「日本のサウナ60年」と「ブームの変遷」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン