ビジネス

楽天・三木谷社長「ITの寵児」賭け辞める辞めないの大ばくち

 安倍晋三政権発足にともなった1月に設置された「産業競争力会議」の民間議員に就任していた楽天の三木谷浩史会長兼社長が、2013年11月6日午後、記者会見し、薬のインターネット販売自由化に逆行する政府方針に抗議して、民間議員を辞任すると発表した。ところが、18日に安倍首相にとりなされて辞任を撤回している。このドタバタは、いったい何が目的だったのか、ジャーナリストの須田慎一郎氏が解説する。

 * * *
「これであの三木谷社長も少しは大人しくなるだろう。野に放ってギャーギャー騒がれるよりも、内部に取り込んでしまった方がわれわれにとって好都合だ」(厚生労働省幹部)

 産業競争力会議の民間議員を辞める辞めないと、楽天の三木谷浩史社長の言動が二転三転、大きくブレまくって冷笑されている。

 騒動の発端は11月6日、医薬品のネット販売を巡り、一部規制を残すとした政府方針が示されたことに対し、三木谷社長が産業競争力会議の民間議員を辞任する意向を示したことにある。それが安倍首相との会談で一転、辞意を撤回した。なぜか。

 当初から辞任表明に対して、「何様のつもりだ」(現職閣僚)などと、政権与党、霞が関サイドから猛烈な批判が巻き起こった。加えて多くのマスコミでも批判的な論調が相次いだ。任期途中で民間議員が辞任するのは異例なことだから、ここまでは織り込み済みだったはずだ。そこまで強攻策を取らざるを得なかったのには理由がある。

「三木谷社長にとって何よりショックだったのは、IT業界で、今回の一件をきっかけに一気に三木谷離れが進みかねない状況に陥ったことなのです」(楽天グループ幹部)

 政界に対する三木谷社長の最大のセールスポイントは、IT業界のとりまとめ役であるという点に尽きる。

 一方、なぜ三木谷社長が多くのIT企業に対して影響力を行使できるのかというと、政界、権力サイドに太いパイプを持っていることをことさら誇示してきたためだ。

「ところが医薬品のネット販売の全面解禁が見送られたことで、IT業界内部で『三木谷さんも大したことないな』という声が出てきたのです」(IT関連企業CEO)

 そうした意味で三木谷社長は辞任でもしなければカッコがつかなかった。しかし、同時に政界とのパイプを失う危機に直面した。安倍首相の“とりなし”は、まさに渡りに船だったのだろう。ただし、これでもう辞任カードは使えない。「IT業界の代表」の地位をいつまで守れるか。

※SAPIO2014年1月号

関連キーワード

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
来季米ツアー出場権を獲得した原英莉花(C)Yasuhiro JJ Tanabe
《未来の山下美夢有、竹田麗央を探せ》国内ツアーからQシリーズへの挑戦の動きも活発化、米ツアー本格参入で活躍が期待される「なでしこゴルファー」14人
週刊ポスト
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン