収入を得るためにやろうとすると、アクセス欲しさにウケを狙いたくなるし、自己顕示欲が募れば、個人を特定できるような情報も出したくなる。しかしムリをしては犠牲になる部分が出てくるし、イマドキのインターネットでは個人情報を出すリスクも大きい。その割にあまりメリットがないことが、他アカウントの人気動画も例にして、具体的に書かれている。
実際YouTubeのコンテンツを見ると、伊藤さん本人が語るように、特別な技術はないかもしれないが、着眼点がユニークだし、妻である妄想グルメ・母のクリエイター魂やセンス、手先の器用さはなかなかのレベルで、「How To Make Balloon Chocolate Bowls 風船チョコレートお椀」がYouTubeの「Best Food Videos Of 2013」で3位にランクインしたほど。その実力に、「誰にでもできると言われても……」と思う人は多いかもしれない。
しかし記者が“こういうところが、成功したポイントだな”と感じたのは、動画のクオリティよりも、本書に書かれている伊藤さんご夫婦の「99%家庭」スタンスのブレのなさ、欲に流されない面や、ネット社会というリスクが多い場に対する“ディフェンス力”の高さだった。
「僕らの世代は、バブルの時はリゲインのキャッチコピー『24時間、戦えますか』のように、バリバリ働くのが当たり前。不況になったら人員を減らされた分、残業が増えて――そういう仕事ばかりの生活から、抜け出す方法を模索しているうちに、今の形に“流れ着いた”感じです(笑い)。
これから先もずっと同じ形でやっていけるのかは、正直わかりません。それでも仕事だけの暮らしで、追い詰められたり、多くのことを犠牲にしてしまっている人に、“そうじゃない生き方もある”と考えてみて欲しいし、“こんなことで、暮らしていけるかも”と思ってもらえると嬉しいですね」(伊藤さん)