芸能

淡路恵子 萬屋錦之介のチケットを1万枚売った凄腕営業マン

 11日、食道がんのため80才で亡くなった淡路恵子さん。大女優でありがながら、元夫・萬屋錦之介の借金などもあり、お金に苦労したことでも知られる。そんな淡路さんが、亡くなる直前まで続けていた『女性セブン』の連載で、女優ではない別の顔について告白していた。

 * * *
 女優・淡路恵子のことは知っていても、営業マン・淡路恵子のことは知らない人が多いんじゃないかしら。

 何のことかって?

(萬屋)錦之介さんと結婚していちばん大変だったのが、彼の芝居のチケットを売りさばくことだったの。今でも夢に見るくらいよ。

 でも営業の腕前は自分で言うのもなんだけど、大したものだったわね(笑い)。

 毎年1回、6月に行われる座長公演。萬屋錦之介の名前にかかわる舞台だから是が非でも歌舞伎座をいっぱいにしないといけないわけ。私ひとりで1万枚近く売ったことだってあるんだから。

 1年に1回、その時だけホイッて行って、「さぁ、買ってください」って言っても無理よ。このへんは若い営業マンたちにアドバイスしてあげたいわね。

 その場限りの飛び込み営業をいくらやったって、そうそう売れるものじゃありません。何度も何度も足を運んで、顔見知りにならなきゃだめ。

 私だって、誰それの奥様のお誕生パーティーとか、娘さんの成人のお祝いとか、何かにつけて出かけて行って顔をつないだものよ。

 私は普通の営業マンさんのような名刺を持っていません。でも女優としての実績が名刺みたいなものよね。淡路恵子が来てくれたってことで、そこそこ覚えてくれてるの。

 これを繰り返してやっと年に1度の座長公演のチケットを買ってもらえるんです。

 でも、ただ売るだけじゃないのよ。歌舞伎座の「とちり席」ってわかるかしら。今は1、2、3…って数字の順番になっちゃったみたいだけど、昔は座席が「い・ろ・は順」だったの。一等の客席の中でも特に見やすいとされていたのが、花道に近い「と列」「ち列」「り列」。

 お客様の好みや、来てくださる人数なんかに合わせてこの席をうまい具合に織り交ぜてお売りするの。なかには「とちり席」より舞台の真ん前がいいってお客さんもいらっしゃるし、逆に後ろがいいってかたもいらっしゃる。

 そういうのを全部データ化しておいて、翌年の営業に役立てるの。さらにいうと、やたらめったらに売りまくればいいってものじゃないのよね。

 チケットを売っているのは私だけじゃない。錦之介さんのお母さんだって、同じように売っているわけだから、気をつけないと、「あーた、私のお客さんを横取りしたわね」ってことになっちゃうでしょ(笑い)。だから大変だし、常に新規顧客の開拓よ。

 あと、今風にはノベルティーグッズっていうのかしら。

 銀行さんなんかが名前入りのボールペンとか卓上カレンダーとかを用意するでしょ。私たちの世界だと“手ぬぐい”や“浴衣”ね。これらのデザインも私が全部やったものよ。

 なかには数百枚単位で買ってくださるかたもいらっしゃるから、そういうお客様には浴衣とか手ぬぐいを持ってご挨拶にうかがうわけ。1か月も前から電話で打ち合わせをして、日時を決めて…これが何十件もあるから大変。

 藤沢の自宅から自分で車を運転して東京までえっちらおっちらやってきて、1日で何軒も回るの。完全に営業の仕事でしょ。

 こういうことを地道に続けた結果、ひとりで1万枚を売りさばく敏腕営業マン・淡路恵子が誕生したというわけ。

 舞台やスクリーンでは夢を売って、現実世界ではチケットを売って…。考えてみると私の人生ってステキなマッチポンプよね(笑い)。

※女性セブン2014年1月23日号

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