大切な人をどう送るか、誰にとっても切実な問題だ。「最近、残される家族の経済的負担を軽くしようと、『火葬だけでいい』と希望する人も例外的ではなくなりました」と話すのは、葬儀相談員で市川愛事務所代表を務める市川愛氏だ。
たしかに費用だけを考えれば、葬儀をしないほうが安くすむのは明らか。葬儀費用の全国平均は約200万円で、身内だけでささやかに営む「家族葬」でも、80万円くらいはかかるという。しかし、こと葬儀に関しては、お金の損得だけで判断するのは難しい。
「葬儀には、ただ故人を葬るだけでなく、儀式を行なうことで遺された人の心のケアをするという意味もあります。まったく葬式をあげないという選択はあまりおすすめできません。例えば、自宅で本当に身内だけで小規模に行なえば、それほど費用はかけずに葬儀をあげることができます」(市川氏)
さらに費用がかからない究極の選択肢が、「直葬」という方法だ。祭壇を設けず、通夜や告別式もなしで、火葬のみを行なう。
「火葬場やドライアイスなど最低限必要な手配は葬儀社に頼むほうが得策ですが、それでも柩代、火葬場への搬送車両代、葬儀社スタッフの人件費なども含めて、地域差はあるものの20万~30万円で行なうことが可能です」(市川氏)
ただし、「火葬だけでいい」という故人の遺志によって直葬にしたところ、後から田舎にいる親戚たちに「なぜきちんと葬儀をあげなかった。故人がかわいそうだ」などと非難され、なかには絶縁されてしまったケースもあるというから要注意だ。
※週刊ポスト2014年3月7日号