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トヨタとスズキ 同じ自動車会社ながら利害が相反する関係

 税金の安さやハイブリッドカーを凌ぐ燃費の良さで、昨今ますます台数を増やしているのが軽自動車だ。日本にしかない独自の規格ゆえ“ガラ軽(ガラパゴス軽自動車)”とも揶揄されるが、今や国内市場の4割にあたる年間約200万台が売れている。だが、来年10月に引き上げ予定の「消費税10%」に向けて、そんな「庶民の味方」が狙い撃ちされた。

 昨年12月12日にまとまった2014年度税制改正大綱で、2015年4月以降に販売される新車にかかる軽自動車税が、現在の年間7200円から1万800円に上がることが決定した。

「10%への消費増税と同時に自動車取得税が廃止されることは既に決まっているが、それによって約1900億円(2013年度)の地方自治体の財源が減る。その穴を埋める代替財源として総務省が目をつけたのが、軽自動車税だった」(経済ジャーナリスト・福田俊之氏)

“財界長老”と称されるスズキの鈴木修会長兼社長(84)は「軽自動車増税は弱い者いじめ」と批判したが、総務省は聞く耳を持たなかった。対照的に、軽自動車増税に内心ホッとしたのが、トヨタだろう。

「表向きは自動車業界が一枚岩となって軽自動車増税に反対してきたが、トヨタはどうも容認しているような雰囲気だった」(自動車専門誌記者)

 11月15日、自動車工業会の会長を務める豊田章男・トヨタ自動車社長(57)は、「軽自動車税こそ国際水準の税額だ」と記者会見で主張した。

「でも、豊田さんが本当に政府に訴えていたのは、高級車ほど負担が重くなる自動車購入時の自動車取得税を、今年4月の消費増税のタイミングにあわせて減税してもらうことではないか。

 その要請は受け入れられ、5%から3%に。政府側から見れば、取得税減税というアメと軽自動車増税というムチをセットにすることで業界全体に楔を打ちこんだといえる。結果的にトヨタの意向は受け入れられ、スズキは切り捨てられた」(前出の専門誌記者)

 トヨタは2011年から子会社のダイハツがOEM生産(※注)した軽自動車を年間6万台販売しているものの、自前の軽は持っていない。“傷口は最小限に”というのがトヨタの本音かもしれない。軽自動車増税で立ち位置の違いが鮮明になったトヨタとスズキ。同じ日本の自動車メーカーで、これほど利害が相反する存在はない。

【※注】他社ブランドで販売される製品を製造すること。製品の供給を受けたメーカー(ここではトヨタ)は、自社ブランドでその製品を販売する。

※週刊ポスト2014年3月21日号

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