そういう雰囲気だから、メディアも「日本頑張れ」一辺倒の報道で、「日本が優勝するかも知れない」「日本がコロンビアに勝てば予選グルーブ突破も」とか、現実を見ない景気の良い報道ばかりしている。戦争中に軍部をヨイショしていた構図と同じですよ。実際にコロンビアとの対戦を見た人なら、日本が勝てるはずもない相手だとわかったでしょう(笑)。
しかもまだW杯は続いているのに、貴重な取材パスを持った日本の報道陣が続々と帰国している。これはサッカー記者として本当に恥ずかしい。これで「私はW杯を取材しました」と言えるんですかね。
今からでも遅くはないので、次の監督選びは慌てず、まず今大会の総括から始めるべきです。フランス人、ブラジル人、イタリア人とか場当たり的に外国人監督ばかり物色してはいけません。日本人だって素晴らしい指導者が育ってきていますよ。もっと広い視野、高い見地から日本が本当にワールドカップで勝てる方法を謙虚に考えてほしいですね。(談)
■プロフィール 中条一雄(ちゅうじょう・かずお)
1926年生まれ。中高大とサッカー選手。1953年に朝日新聞社に入社し、運動部記者として主にサッカーとオリンピックの取材を手がけた。サッカー取材歴は60年に及ぶ。ワールドカップは1974年の西ドイツ大会から2002年の日韓大会まで8回、現地取材を行った。主な著書に「サッカーこそ我が命 – ワールドカップを楽しむ旅」(朝日新聞社)などがある。