ライフ

大正に話題の「日ユ同祖論」モーゼの十戒石を日本で「発見」

「日本人は古代ユダヤ人の末裔である」「源義経は大陸でジンギスカンになった」日本人のルーツに関わる奇想天外な言説は数多い。『偽史冒険世界』などの著書がある長山靖生氏が解説する。

 * * *
 外見的にも宗教・文化的にもまるで似ていない日本人とユダヤ人が同じ民族という、「日ユ同祖論」。大正13年、酒井勝軍の著作『猶太民族の大陰謀』で広く知られた。酒井は語学に優れ日露戦争やシベリア出兵で軍の通訳を務めたほどのインテリである。

 彼は日本人がイスラエル史における「失われた十支族」であり、日本国こそ旧約聖書に書かれた「約束の地」であると主張。実際にモーゼの十戒を刻んだ「十戒石」を日本国内でいくつも”発見”した。

 クリスチャンの酒井はアメリカ留学中、白人に差別された苦い経験から、日本人こそが正しいキリスト教徒として神の理想を現実にしなければと誓った。そしてキリスト教の根源であるユダヤ教に着目。日本人とユダヤ人は同祖であり、なおかつ「正統のユダヤ人」たる日本人が「閏統(正統でない系統)のユダヤ人」を戒めるべしという驚くべき妄想を生み出した。

 この酒井説から”分派”が続々登場。イスラエル十二支族の聖裔のひとり、「ガド」が日本の天皇(ミカド)の祖先であるとの奇説や、日本の囃し言葉や民謡はヘブライ語で解釈できるとの珍説が生まれた。この説によると、秋田音頭の「ヤートセー」は「エホバ放棄せり、敵を」で、「ナンジャラホイ」は「天子をエホバは守りたまりえり」となる。

※SAPIO2014年12月号

関連キーワード

トピックス

志穂美悦子さん
《事実上の別居状態》長渕剛が40歳年下美女と接近も「離婚しない」妻・志穂美悦子の“揺るぎない覚悟と肉体”「パンパンな上腕二頭筋に鋼のような腹筋」「強靭な肉体に健全な精神」 
NEWSポストセブン
「ビッグダディ」こと林下清志さん(60)
《還暦で正社員として転職》ビッグダディがビル清掃バイトを8月末で退職、林下家5人目のコンビニ店員に転身「9月から次男と期間限定同居」のさすらい人生
NEWSポストセブン
鷲谷は田中のメジャーでの活躍を目の当たりにして、自身もメジャー挑戦を決意した
【日米通算200勝に王手】巨人・田中将大より“一足先にメジャー挑戦”した駒大苫小牧の同級生が贈るエール「やっぱり将大はすごいです。孤高の存在です」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を訪問された佳子さま(2025年8月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《日帰り弾丸旅行を満喫》佳子さま、大阪・関西万博を初訪問 輪島塗の地球儀をご覧になった際には被災した職人に気遣われる場面も 
女性セブン
侵入したクマ
《都内を襲うクマ被害》「筋肉が凄い、犬と全然違う」駐車場で目撃した“疾走する熊の恐怖”、行政は「檻を2基設置、駆除などを視野に対応」
NEWSポストセブン
山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン
谷本容疑者(35)の地元を取材すると、ある暗い過去があることがわかった(共同通信)
「小学生時代は不登校気味」「1人でエアガンをバンバン撃っていた」“異常な思考”はいつ芽生えたのか…谷本将志容疑者の少年時代とは【神戸市・24歳女性刺殺】
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン