──「東ロボくん」は東大合格圏にはるかに届かない一方、将棋ソフトは、タイトルホルダーに次ぐレベルの棋士に勝っています。
片上:僕は東大を受験するために勉強したのは1年ぐらいで、一方、将棋は大学時代の22歳でプロになるまでに10年ぐらい修行しました。ハードルの高さは全然違いますよ。でも、将棋は自然言語を使うわけではないし、決まった枠組みの中で特定の問題を解くわけです。コンピュータはそういうことに関しては能力を発揮するんですね。それに、コンピュータは疲れず、眠くならず、従って判断ミスがない。
──いずれすべての手の順列組み合わせをコンピュータが分析できる日がやってくると思います。
片上:将棋の探索空間(すべての手の順列組み合わせ)は10の220乗とも言われているんですが、コンピュータがそれを分析できるようになるのは早くて2050年ぐらいと聞いたことがあります。理論的には、それ以降はコンピュータはどんなプロにも必ず勝ちます。
でも、それでも僕は将棋を指し続けます。将棋を指すのは面白いし、将棋の本質を自分で追究したいですからね。そういう感情や欲求が人間らしさだと思いますし、それはコンピュータでは代替できませんから。
インタビュー・文■鈴木洋史
※SAPIO2014年12月号