ライフ

東大卒プロ棋士が語る「人間が将棋ソフトに勝てなくなる日」

 2011年から国立情報学研究所を中心に始まった「ロボットは東大に入れるか」プロジェクト。人工知能(コンピュータ)にできることとできないこと、裏返せば人間に残される領域は何かを探り、その指標として「東ロボくん」と名付けられた人工知能が大学受験の模試に挑戦している。そのプロジェクトの中間報告が『ロボットは  東大に入れるか』(新井紀子著/イースト・プレス/本体1400円+税)という書だ。

 一方、一昨年から行なわれているプロ棋士と将棋ソフトによる「電王戦」では、ソフトの側が大きく勝ち越している。「電王戦」を担当する日本将棋連盟の理事で、東大卒棋士である片上大輔六段は人工知能をどう見るか。

──昨年11月、「東ロボくん」が代ゼミの「全国センター模試」(選択式)と「東大プレ入試」の数学(記述式)を受け、東大は圏外でしたが、私大579校中403校で合格可能性80%以上という結果でした。偏差値は、科目の組み合わせによって40代半ば~後半です。

片上:偏差値はともかく、問題文の自然言語を読み、「東大プレ入試」では自然言語を交えた長い解答を出力していることに驚きました。コンピュータにとっては自然言語の処理が難関のひとつで、そこまでのレベルに達していると思っていませんでしたから。

 ただ、本書の解説を読むと、コンピュータは、人間が自然にやるように言語の意味を真正面から丸ごと理解するのではなく、言語についての膨大なデータを使い、文字の配列を分析するなどして意味に近似しようとしているんですね。実は、「意味を理解していない」のは将棋ソフトも同じなんです。

──例に挙げられている「東大」と「東西」が象徴的ですね。一文字違いでも意味はまったく異なりますが、コンピュータにとっては単に記号として異なるだけです。

片上:「私は、岡田と広島に行った」と「私は、岡山と広島に行った」の翻訳の問題も面白い。人間は前者を「I went to Hiroshima with Okada」、後者を「I went to Okayama and Hiroshima」と訳す。しかし、コンピュータは前者も後者と同じように訳してしまう。論理では間違わないけれど、常識の部分で間違ってしまうんですね。

 ただ、そこには日本語独特の難しさがあるのではないでしょうか。英語ならもともと「with Okada」「Okayama and」と書き分けられていて、混同しませんから。「東ロボくん」が英語で出題されるハーバードの試験を受けたらどういう結果が出るのか興味がありますね。

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン