ビジネス

日本国債が韓国よりも格下に 金融機関や企業への影響を懸念

 前回総選挙の公示日前日、格付け会社ムーディーズは日本国債の格付けを「Aa3」から「A1」に1段階下げた。それにより日本国債の信用力は中国・韓国よりも1段階低くなった。このタイミングでなぜ格下げが行なわれたのか。ワールドゴールドカウンシル日本代表の森田隆大氏が指摘する。

 * * *
 国債の信用力を示す格付けは、発行母体である政府の「支払い能力」と「支払い意欲」を評価して行なわれる。今回、ムーディーズが日本国債を格下げした理由は、安倍首相の消費増税延期の決定を「支払い意欲が低い」と見なし、財政再建の達成に「不確実性が高まった」からとされている。
 
 しかし、今回の格下げでデフォルト(債務不履行)リスクが大きく上昇したわけではない。ムーディーズがまとめた過去20年間の統計によると、「Aa」の5年後デフォルト率は0.97%、「A」は同1.31%とほとんど変わらない。日本国債のリスクが相対的に高まっていることは事実だが、今回の格下げはあくまで微調整に過ぎず、国として信用性が損なわれるレベルではない。
 
 むしろ深刻なのは、金融機関や企業への影響である。金融機関や政府系機関の信用評価には“政府からのサポート”が織り込まれているため、国債が格下げされれば、それら機関の信用力も下がる。実際、今回の国債格下げに伴い、ムーディーズは5つの銀行、2つの生保、12の政府系事業体について、次々に格下げを実施した。
 
 格下げされた銀行は、例えば海外で資金調達する際、金額や借り入れ年限などの条件が悪化し、調達能力が低下することになる。メーカーなど海外で活動する日本企業の多くは邦銀から資金を借り入れているため、それら企業の資金調達能力も下がる。
 
 現地金融機関から調達しようとしても、格付けをもとに「リスクが高い」と判断されれば、海外プラントの建設費用を市場から調達できなくなったり、公共工事の入札で拒否されるケースも考えられる。海外ではそれほど格付けが重視され活用されているのだ。
 
 現在業績が好調で「Aa」ランクの企業でも、今後、1年程度のタイムラグを経て国債と同じ「A」に格下げされる可能性は極めて高い。

※SAPIO2015年3月号

関連キーワード

トピックス

田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(中央)
《父・修被告よりわずかに軽い判決》母・浩子被告が浮かべていた“アルカイックスマイル”…札幌地裁は「執行猶予が妥当」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま入学から1か月、筑波大学で起こった変化 「棟に入るには学生証の提示」、出入りする関係業者にも「名札の装着、華美な服装は避けるよう指示」との証言
週刊ポスト
藤井聡太名人(時事通信フォト)
藤井聡太七冠が名人戦第2局で「AI評価値99%」から詰み筋ではない“守りの一手”を指した理由とは
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン