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ペットと同居できるアニマルセラピー老人ホーム QOLを重視

 横須賀市西部の山間にある特別養護老人ホーム「さくらの里山科」。アニマルセラピーは施設や病院に招かれてNPOなどが訪問することが多いが、この施設では入居者100名と犬6匹、猫8匹が“同居”する。

 4階建ての建物は個室と共用のリビングなどの「ユニット」に大別され、2階に犬や猫と過ごすユニットがある。

 ここで暮らす動物の“出身地”はさまざまだ。飼い主に先立たれたペットもいれば、保健所で殺処分寸前だった犬や猫もいる。かつては原発事故後、福島の避難エリアで保護された犬もいた。引き取った動物には獣医が健康管理や予防接種を行っている。

 施設長の若山三千彦さんが言う。

「3年前の開所当初から犬や猫と暮らせる体制をめざしました。高齢になるとペットをあきらめざるを得ないかたもいます。年をとっても動物が好きな人は安心して動物と暮らせるよう支援したかった」

 セラピーを意識して動物との同居体制を始めたわけではないが、その効果はてきめんだった。

「認知症の80代女性は夜になると怖い妄想を見て眠れなくなり、昼夜が逆転して生活リズムが崩れましたが、犬が同じ部屋で寝るようになると、心の平静を取り戻して夜に眠れるようになりました。いくら話しかけても無言だった入居者は、『ジローはどこにいったの?』と人に聞くようになりました。動物という共通の話題ができ、入居者同士がコミュニケーションするようになりました」(若山さん)

 ここではもともと飼っていたペットと入居できる。澤田富與子さん(71才)は昨年春、猫の「ゆうすけ」と一緒にやってきた。

「捨て猫だったこの子を引き取ってからずっと一緒に暮らしていて、私には家族以上の存在です。離れて暮らすなんて考えられませんでした」

 そう話す澤田さんの近くでじゃれる猫はその場を離れようとしない。

 施設内には、犬や猫に囲まれて自然とにこやかになる高齢者ばかりいる。

 介護施設は入所者をただ「介護」するのではなく、「QOL」(Quality Of Life=生活の質)を向上する場でもあるべきと若山さんは言う。

「昔の老人ホームには、食事、入浴、排泄という三大介護ケアさえやっておけばOKという面がありました。でも、人生最後の年月を過ごす場だから、ただ生き長らえるだけでは寂しいですよね。たとえ寝たきりでも『今が楽しい、幸せだ』と思ってもらいたくて、ペットと暮らせる環境を整えています」

※女性セブン2015年3月5日号

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