ロシアを批判しつつも日本は独自に距離を測るのか、それとも制裁一色で欧米との連携を強化するのか。これまで以上に難しい選択を迫られるだろう。当面は昨年延期されたプーチン大統領の訪日が年内に実現するかどうか、が焦点になる。
来日の可能性はあると思うが、今回の発言で再び微妙になったのは間違いない。武力侵攻を認めた本人を懲罰棚上げで歓迎するわけにはいかないからだ。
気になる点がもう1つ。どうもマスコミの反応が鈍い。毎日新聞は16日付朝刊1面で報じたが、読売新聞や朝日新聞は一拍遅れて同日夕刊で記事を掲載した。他紙やテレビの扱いも小さい。
テロの衝撃的なニュースが続いたせいか、居直り発言程度には驚かなくなってしまったのだろうか。そうだとしたら心配だ。目先の衝撃度はともかく、小さな石が開けた網の裂け目が徐々に広がっていくように、世界秩序は少しずつ蚕食(さんしょく)されていく。世界の潮目は完全に変わった。そこをしっかり見るべきだ。
■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)
※週刊ポスト2015年4月3日号