これは「外交」というものの本質を示している。左派系論者やマスコミは口を開けば「対中摩擦は話し合いで解決を」とまじないのように唱えてきた。「話せば分かるはず」と信じてきたのだ。
これは根本的な間違いである。外交は単に相手国との話し合いだけではない。第3国を巻き込んで相手にどう圧力をかけるかが勝負なのだ。今回の例で言えば、日本は中国との外交戦を米国を巻き込んで、米国も日本を巻き込んで展開した。両首脳は日米外交を展開したようにみえて、実はそれぞれ対中外交を展開していた。
その結果、日米が一致して中国に対抗する路線が確定した。外交はかくあるべき、という見本のような展開だ。繰り返す。だから勝利なのだ。ここが核心である。
■文/長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年 新聞は生き残れるか』(講談社)
※週刊ポスト2015年5月22日号