ライフ

豚レバー生食禁止は当然でも「食肉の加熱基準」には問題山積

6月から生食が禁止される豚レバー

 厚生労働省から「豚レバー禁止令」が出されることになった。豚肉の生食でE型肝炎にかかる人がいるからである。だが加熱条件はそれでいいのか。鶏肉は安全なのか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
「また」である。厚生労働省が豚肉の生食の禁止を決定した。実施は6月中旬ごろを予定しているという。2012年に牛レバーの生食が禁止され、以降、その代用として豚レバーを生食で出す店が増えたことを受けての措置だ。

 豚レバーの「生食」禁止は当然といえる。国立感染症研究所によれば、2012年から2014年までの3年間に豚由来のE型肝炎の患者は54人。確認されている原因食材としては最多であり、免疫力の低い子どもや老人、そして妊婦などは劇症化しやすい。「生食」などもってのほか。絶対に避けるべきだ。

 だが「また」なのはここから先だ。「生食禁止」が持ち上がると、お題目のようにとなえられる加熱条件がある。中心温度が63℃で30分、もしくは75℃で1分。日本における食肉の加熱基準はほぼこのふたつに集約されてしまっている。昨年末に整備された野生鳥獣(ジビエ)の衛生管理に関するガイドラインでも、厚生労働省は「75℃1分と同等以上」という基準を打ち出した。その後、厚生労働省は問い合わせを受けて63℃30分も同等の加熱とみなすと回答しているが、実はここに矛盾がある。

 「63℃30分」に相当するのは加熱時間1分なら70℃。いっぽう、加熱温度が75℃なら5秒となる。75℃1分ではない。異なるはずの基準を持ちだして「同等」と言う。しかもこの基準はアップデートされずに、何十年も運用され続けている。なぜ適正な基準の設定に力を注がないのだろう。ジビエのガイドライン設定時もあまりの拙速な議論に一部から批判の声が上がった。厚労省は、「今後得られた科学的知見を踏まえ、必要に応じて本指針の見直しについて検討する」といったが、現状見直すそぶりは見られない。

 2011年にアメリカ農務省(USDA)はそれまで71℃だった豚肉の加熱基準を63℃3分に引き下げた。それより古い2009年のFDAの基準でも60℃12分、「旋毛虫」に言及した連邦規則では豚肉の加熱は61.1℃で1分、62.2℃まで上げればベンチタイムは必要ないとされている。条虫(いわゆるサナダムシ)類も資料によって幅はあるものの、57~60℃で死滅させられるとされている。

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン