ライフ

AKB総選挙と安保国会 そこで語られる「自分の言葉」について

「自分の言葉で語る」ことは難しい。しかし自分で語れないと、人にわかってもらえない。AKB総選挙からフリー・ライター神田憲行氏が思ったこと。

 * * *
 全然ファンではないのだが、たまたまつけてテレビでやっていたAKB総選挙に見入ってしまった。順位を発表して、呼び出されたひとりひとりがマイクの前でするスピーチが面白かった。

 とくに印象深かったのは、去年の7位から9位に落ちた島崎遥香さんのスピーチだった。

《私は、たくさんの人に、好かれるタイプじゃないけど》

 というのは、全方位外交のアイドルからすれば勇気が要った発言だと思う。彼女は握手会の態度が他のメンバーに比べて素っ気ないことから「塩対応」と呼ばれているらしいが(逆にどんな様子で握手するのか見てみたいわ)、順位が落ちたことがショックだったのだろう、毎年1分程度のスピーチが4分に渡ったという。やはり挫折したときの言葉ほど、人の心に届く。

 彼女らはタレントなのであらかじめ脚本のようなものが用意されているのかとうがった見方もしたが、あれだけ場面に応じたスピーチを何人分も何種類も用意するのは不可能だ。ガチでやっているからこそ、出てくる言葉だと思う。

 またタレントだから「喋り」が巧い、というわけではもないと思う。彼女たちと同世代の高校野球の選手も、私が取材を始めた20年前と比べるとずいぶん巧くなった。

 昨夏でいうと、日本文理の飯塚悟史投手(現・横浜DeNAベイスターズ)だ。まるで大人のように落ち着いた口ぶりで自分のプレーを振り返って説明してくれた。非常に取材しやすい選手だった。

 私の経験則で言うと、優れた選手は自分で考えた言葉で話す。恐らく毎日の練習でも自分で考えながら取り組み、長所・短所のポイントを把握し、試合ではつねにそのポイントにフィードバックしながらプレーしているからだろう。だから試合後20分程度でまだ甲子園の土にまみれたまま取材を受けても、すでに頭の中で整理されている。

 最近だと安樂智大投手(済美→楽天イーグルス)のコメントが印象に残っている。自分のピッチングを振り返ることを求められて、

《初回に外のストレートを左打者に巧くレフト前に運ばれたので左打者に外のストレートは使えないと思い、インコースとスローカーブで打ち取るようにしました。9回もスローカーブが使えたから、ピンチを切り抜けられたと思います。ストレートばかりだと逆転されていたと思います》

 ここまで一気に喋る。どうです、すごいでしょう。藤浪晋太郎投手(大阪桐蔭→阪神タイガース)もやはり、よどみなく質問に答える姿が印象的だった。アイドルであろうと高校野球の選手であろうと、ガチでやってる18歳は自分の言葉を持っている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト
苦境に立たされているフジの清水賢治社長(左/時事通信フォト)、書類送検された山本賢太アナ(右=フジホームページより)
“オンカジ汚染”のフジテレビに迫る2つの危機 芋づる式に社員が摘発の懸念、モノ言う株主からさらに“ガバナンス不全”追及も
週刊ポスト
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?(時事通信フォト)
二刀流復活・大谷翔平の「理想のフォーム」は?「エンゼルス時代のようなセットポジションからのショートアームが技術的にはベター」とメジャー中継解説者・前田幸長氏
NEWSポストセブン
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO
《国民に愛された『TOKIO』解散》現場騒然の「山口達也ブチギレ事件」、長瀬智也「ヤラセだらけの世界」意味深投稿が示唆する“メンバーの本当の関係”
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
NEWSポストセブン