同会議は昨年の提言でも、日本が直面している深刻な人口減少をストップさせ、地方を元気にしていくためには、地方から大都市へ若者が流出する“人の流れ”を変えて「東京一極集中」に歯止めをかけなければならない、と主張した。しかし私は、その際も「東京一極集中が地方消滅危機を救う」という持論を述べた。
東京都心の屋根の上(空中)にはまだまだ余裕があるので、容積率緩和を実行して湾岸エリアなどのマンハッタン化を進めれば、いま以上に人、カネ、モノ、情報が集まり「職住接近24時間タウン」が可能になる。それは毎日の通勤ラッシュから人々を解放してビジネスマンの効率アップをもたらし、日本企業や日本の国全体の生産性をも向上させる。
東京一極集中は日本のためには望ましいことであり、もっと都心に集中させれば通勤などの問題も軽減されるので、要は都市計画の問題に帰着するという考えだ。
ところが、この提言の後、政府は2016年度の地方創生施策に関する基本方針の素案に大都市の高齢者の地方移住促進を柱として盛り込んだ。なんと2016年度から長崎県、新潟県南魚沼市、山梨県都留市、茨城県笠間市で先行してモデル事業を実施して新型交付金を配り、規制を緩和する特区の指定も検討するという。
モデル事業を実施する自治体に、日本創成会議が移住先の候補地として挙げた41地域が長崎を除いて入っていないのは不可解だが、これはまさに(役人らしい)愚策の最たるものであり、速やかに方向転換すべきである。
※週刊ポスト2015年7月10日号