安保軍事関連の報告書は大統領が発表する「国家安全保障戦略」や議会向け報告書など、いくつかあるが、今回の統合参謀本部の報告書は「軍司令部の本音」が率直ににじみ出ている点に特徴がある。

 先の大統領発言と併せて考えれば、いまや米国は軍から大統領に至るまで「中国は国際秩序と米国を脅かす脅威」という認識で完全に一致した、とみていい。

 実はそんな米国の対中強硬姿勢が、逆に中国が最近になって融和的な姿勢を見せ始めた最大の理由でもある。

 たとえば、習近平国家主席は9月の訪米を控えて「南シナ海の岩礁埋め立てはまもなく終了する」と言った。あるいは、あれだけ顔をそむけていた安倍晋三首相の訪中・日中首脳会談も積極的な受け入れ姿勢に転換した。日本側からではなく、中国側から日本にすり寄ってきた。

 日米が妥協しそうもないとみたからこそ、中国は動かざるを得なくなったのだ。

 対中融和論やいわゆる「独自外交論」の誤りがここに証明されている。中国との関係を改善するのは、けっして融和ではない。日米が結束したうえで、相手の誤りを指摘する毅然とした姿勢なのだ。

 今回の報告書はアジア太平洋を米国の「死活的シアター(地域)」と位置づけて日本と豪州、韓国、フィリピン、タイ、インド、ニュージーランドなど12か国との連携強化を掲げている。やがて新しいアジア太平洋の安全保障枠組みにつながるのではないか。

■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2015年8月7日号

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