ビジネス

GPIF年金運用「一長一短だが国民的議論が欠けている」懸念も

 日経平均が乱高下しているが、株式運用されている私たちの年金は大丈夫なのだろうか。経済学者で投資家の小幡績氏が、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金資金を株式市場で運用することの是非について解説する。

 * * *
 GPIFとは、私たちの年金を運用している政府が監督する機関で、130兆円もの資金を運用する世界最大の運用機関です。公的年金(国民年金と厚生年金)の運用ということで、かつては非常に保守的な運用、つまり「あまり儲けないが、確実に資金を守る」という考え方で金融資産に投資してきました。

 その結果、日本国債に資金の70%弱を投資し、残りの30%を日本株式、外国の国債、外国株式に向ける運用してきました。

 このGPIFが近年急に注目を集めたのは、安倍政権になって大きく運用方針を変えたからです。資金の50%を株式で運用する方針に大転換されました。残りの35%が日本国債、15%が外国の国債となりました。

 そもそも、70%弱を日本国債で運用していたのは、全額日本国債で運用した場合と同じ程度のリスクの範囲で運用しよう、という考え方をした結果でした。

 全額日本国債で運用するのは一つの考え方です。130兆円もの資金がある以上、現金で置いておくのはもったいないから、何か利子のつくものにしておこう、としたときに「一番無難なのは日本国債だ。リスクがもっとも低い国債で、円建てだから為替リスクもない。国民のコンセンサスを得やすい」という考え方です。

 しかし、全額日本国債というのは「もったいない」運用なのです。様々な資産で運用することによりリスク分散の効果が得られ、リスクを高めずに期待される平均運用利回りを高めることができます。

 たとえば株が上がるときは、国債はそれほど値上がりしないことが多いです。また、日本の株式がいまいちでも海外の株式が上昇することもあります。違う資産であれば、違う値動きをしますから、全部同時に暴落はしません。

 それでいて、平均的な利回りは日本国債よりも高い。だから「日本国債以外の資産も多少混ぜて運用しよう。全体のリスクを高めない中で、30%程度は日本国債以外の資産で運用して良さそうだ」といった試算をし、日本国債70%、その他の日本株、外国株、外国国債がそれぞれ約10%と決まっていたのです。

 株式に多少投資することで、リスクは上げずに我々の年金の資金を増やすことができる。私たちにとってもいいことなのです。

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン