国内

元少年Aがパスポート2冊取得の違法行為 目的は影武者か?

 複数の週刊誌に手紙を送り、ホームページを開設したことを告知した神戸連続児童殺傷事件の犯人・元少年A(33才)。女性セブンは、Aを追う過程で、彼の明確な「違法行為」を掴んだ。

 それは、Aの持つパスポートの問題だ。Aは春先にパスポートを2冊取得していたことがわかった。発給地は東京で、発行日は2つとも同じ日である。

 この不可解な出来事が何を意味するのか──それを述べる前に、まず「パスポートの2冊取得」が違法行為であることを説明する。

 原則としてパスポートは1人1冊のみ所有できる。一般の日本人の場合、手元にパスポートが同時に2冊存在しえるのは、紛失して再発行後に紛失した方を発見したケースのみ。このケースでいえば再発行を申請した時点で紛失した方は失効手続きが取られるため、使えない。

 しかし、日本のパスポート申請には盲点があるという。元入管職員が匿名を条件に語る。

「同日に別々の役場で申請すると、重複の登録記録がなく、2冊のパスポートが作れてしまうケースがあります。同じ人物で旅券番号が違うパスポートができあがるということです。Aもこの手口で作ったのではないでしょうか。もちろんこれは重大な旅券法違反に当たります」

 正確には、旅券法第4条の2項「旅券の二重受給の禁止」に該当し、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される。Aの目的について、公文書偽造問題に詳しい長瀬佑志弁護士が語る。

「1つは国外への移動が考えられます。出入国記録などの情報は、旅券番号などで管理されています。仮に今後一方の旅券番号が手配され、出入国が制限されても、もう一方の旅券が有効であれば外国に渡航できる可能性がある。

 もう1つは、個人情報の特定を避けるためではないでしょうか。例えばAがパスポートを身分証として銀行口座を開設したり、住居を構えたり、なんらかの会員になったとします。万一それが第三者に突き止められた場合、“私の旅券番号は違います。それは同姓同名の別人です”と説明できる。自分の痕跡を辿らせないためであれば、このような方法も考えられます」

 ちなみに日本では、過去に重大犯罪を起こして外務大臣に“国の利益を損ねる”と判断された人物の場合、パスポートの取得は困難になるが、Aにはこの通例も関係ない。日本更生保護学会会長で犯罪学者の藤本哲也氏が語る。

「彼が送致されたのは医療少年院で、これは刑事罰ではなく保護処分です。Aには前科はついていません」

 何の罪もない2人の子供を殺したAだが、少年犯罪者の保護更生という名目のもと、過去は消され、新たな名前も与えられて、社会生活上の枷は全て外されていた。

 にもかかわらず、Aは法の抜け道を利用し、また犯罪行為に手を染めた。

 さらに、Aの持つ2冊のパスポートは、もう1つの恐ろしい可能性を示唆している。前出・元入管職員が語る。

「パスポート申請に必要な『本人確認の書類』は、運転免許証や住基カードなど写真付きの身分証がなくても、健康保険証や年金手帳など2点揃えれば申請できます。つまり1冊はAが本人確認書類と自分の顔写真を持参して申請し、もう1冊は全くの別人が“Aです”と名乗って申請する。そうすると、同じAの名前で違う顔写真のパスポートができあがることになる。過去に多くの犯罪者が行った手口で、そのほとんどはなりすまし目的です」

 例えば近い将来、Aの顔が世間に知られる事態になったとする。それ以後、Aは住まいの契約など、社会生活上大きな不都合を被ることになる。

 しかし、別人の顔写真が入ったAのパスポートがあれば話は変わる。その写真の人物にAのパスポートを身分証として公の契約などを結んでもらえばいい。Aは自分の姿をさらすことなく、自由に動き回ることが可能になる。Aは、全くの別人を“影武者”にして隠れて生活できるというわけだ。

※女性セブン2015年10月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
『サ道』作者・タナカカツキ氏が語る「日本のサウナ60年」と「ブームの変遷」とは
《「ととのった〜!」誕生秘話》『サ道』作者・タナカカツキ氏が語る「日本のサウナ60年」と「ブームの変遷」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
連敗中でも大谷翔平は4試合連続本塁打を放つなど打撃好調だが…(時事通信フォト)
大谷翔平が4試合連続HRもロバーツ監督が辛辣コメントの理由 ドジャース「地区2位転落」で補強敢行のパドレスと厳しい争いのなか「ここで手綱を締めたい狙い」との指摘
NEWSポストセブン
伊豆急下田駅に到着された両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《しゃがめってマジで!》“撮り鉄”たちが天皇皇后両陛下のお召し列車に殺到…駅構内は厳戒態勢に JR東日本「トラブルや混乱が発生したとの情報はありません」
NEWSポストセブン
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《早穂夫人は広島への想いを投稿》前田健太投手、マイナー移籍にともない妻が現地視察「なかなか来ない場所なので」…夫婦がSNSで匂わせた「古巣への想い」
NEWSポストセブン
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
芸能生活20周年を迎えたタレントの鈴木あきえさん
《チア時代に甲子園アルプス席で母校を応援》鈴木あきえ、芸能生活21年で“1度だけ引退を考えた過去”「グラビア撮影のたびに水着の面積がちっちゃくなって…」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン