来年3月に発売予定のホンダの燃料電池車
2年に1度のクルマの祭典、「東京モーターショー2015」(東京ビッグサイト)がいよいよ10月30日より一般公開される。今年は世界11か国から160の自動車関連企業が集結。発売前の新型車から注目のコンセプトモデル、最新技術などをお披露目する。
カーマニアの間では、早くもトヨタ自動車の小型試作車『S―FR』、ホンダが11年ぶりに復活させる新型『NSX』、マツダの『スポーツコンセプト』といったスポーツカーに期待する声が高まっているが、モーターショーの醍醐味は何も派手なモデル鑑賞ばかりではない。
「いま、自動車業界は厳しい環境規制に対応した最新エコカーの開発や燃費競争、自動運転システムなどをめぐる未知なる技術の覇権争いが慌ただしくなっています。『最新テクノロジーショー』の観点から会場を回ってみると、また違った楽しみ方もできると思います」
こう解説する自動車ジャーナリストの井元康一郎氏に、“モーターショーを10倍楽しく見る方法”を指南してもらった。
【トヨタVSホンダのFCV(燃料電池車)戦争】
水素燃料を動力源とするFCVは、すでにトヨタが『MIRAI(ミライ)』を発売し、8月末で3000台の受注を超えた模様だが、ホンダも来年3月に発売する量産型の『新型FCV』をモーターショーで正式発表する。
ホンダ車の価格はミライと同等の700万円台を想定。3分間の水素フル充填でミライの650kmを超える700kmの走行距離を実現させるなど、今後、ライバル心剥き出しのFCV戦争が勃発しそうな気配。一足早くホンダFCVに試乗した井元氏は、こう評価する。
「外観のフォルムはトヨタもホンダも変わりありませんが、車内スペースの広さや乗り込んだときの馴染み感、走行時の滑らかさ、騒音低減など、ホンダFCVは2008年よりリース販売している『FCVクラリティ』よりも格段に進化させています」
対するトヨタは、ミライはもちろん、駐車している時に発電装置としても使えるFCVのコンセプト車を世界で初めて公開する。
「水素社会がどこまで広がるか分かりませんが、FCVが将来のクルマ選びの候補となり得るか、じっくり見てきて欲しいと思います」(井元氏)
【手離しの自動運転はどこまで実現する?】
矢沢永吉が出演する日産自動車のCMで強烈なインパクトを与えた自動運転技術。もちろん、日産だけでなく大手メーカーがそれぞれ研究を重ねている注目分野で、今回のモーターショーでもさまざまな新提案が出てくるはず。
「歩行者や自転車が行き交う市街地で、自動運転のクルマをどうやって溶け込ませていくか。人工知能の進化を含めてハイエンドな議論も繰り返されています。機械と違って人間は欲望に従って行動するため、運転支援の機能拡大には大きなハードルも立ちはだかっていますが、各社のアグレッシブな研究成果を確認できる絶好の機会です」(井元氏)