何よりも深刻なのは、そうした極右の台頭の根本的な原因の一つに「既存の政治勢力への失望」があることだ。1990年代後半、英国では労働党のブレア政権、ドイツでは社会民主党のシュレーダー政権など中道左派政権が数多く生まれた。

 しかしそうしたリベラル勢力が主導したEUが、今や貧困や格差の問題の“原因”を生み出している。その失望が、極右に支持が集まる理由の一つであることもまた事実だ。フランス政治に詳しい吉田徹・北海道大学法学研究科教授はこういう。

「FNの支持者は右派から先鋭化した人たちだけではありません。たとえばかつて共産党支持だった労働者層もFNに投票しています。ヨーロッパでは左派政党が中道化してグローバル化を受け入れていった経緯があるが、それによって取り残された貧困層がいる。彼らが極右支持に走っているという側面があるのです」

 だとすれば、既存政党が極右を批判しても、事態を変えることはできない。「どの地域も極右政権だらけ」という恐怖の世界地図は現実味を帯びつつある。

※週刊ポスト2015年12月25日号

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