取材は事務所当番が帰宅する午後5時頃に終わるが、時には食事に同行し、組員の自宅を訪問し、シノギの場面にも立ち会う。なにやら“覚せい剤のようなもの”を売買している様子や、“野球賭博のようなこと”をしているシーンさえある。

「上映したことで取材対象者が逮捕されるのは本意ではないので、法律相談は何度もしています。映っているものが野球賭博と仮定して、この映像で立件できるかということについて弁護士から『賭博開帳図利の犯罪については、賭けるほうと胴元が両方とも証拠がないとダメです。このシーンで犯罪を立件することは不可能』と返事をもらっています」(阿武野勝彦プロデューサー)

 車の事故を起こし、保険を使って修理した組員は、詐欺未遂事件と判断され、警察に捕まった。その件でガサ入れ(家宅捜索)に来た大阪府警のマル暴は、マスコミ取材にまったく気づかず、ヤクザと見紛う暴力的なカマシをカメラに晒す。

「謝礼金は支払わない。収録テープ等を事前に見せない。顔へのモザイクは原則かけない」という約束で取材をしているため、日常のシーンも濃厚である。川口和秀会長がふらりと出掛ける一膳飯屋のおばちゃんは、「ヤクザが怖くないんですか?」と聞かれ、「なんで?」と逆質問してカラカラと笑う。

 ヤクザの立ち位置を考えると、おそらくDVD化は難しいだろう。劇場に足を運ぶ価値は十分にある。

※週刊ポスト2016年1月29日号

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