一方、制作サイドの意図も明確。「ティーンのころから芸能界でもまれ、人生経験を重ねてきた2人ならではの力強さを引き出す」ために、原作小説で29歳だった年齢設定を35歳に上げました。アイドル女優からの脱皮に苦しみ、プライベートでも波乱万丈だった約20年もの年月が、2人の演技にどんな影響を与え、変化をもたらしたのか。DV夫の殺害や、逮捕の恐怖におびえるシーンが続く中盤以降では、これまで見せたことのないような熱演が期待されています。
重苦しいテーマであり、陰のある役だけに、2人にかかる負担は私たちの想像以上に大きく、撮影現場はハード。役のナオミとカナコだけでなく、広末さんと内田さん自身も精神・肉体の両面で極限状態まで追い込まれていく様子も見どころのひとつです。
最終回のラストシーンで2人がどんな演技を見せるのか? そして、2人の枕詞のように使われ、いまだ人々の残像に残る「アイドル女優」という枷を完全に払拭できるのか? 犯罪から逃れようとするナオミとカナコ、アイドル女優から逃れようとする広末さんと内田さん。ともに見守る価値十分です。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。