国際情報

今後はISよりサウジが国際情勢の撹乱要因と佐藤優氏

ポスター左がニムル氏。右はハメネイ氏 TIMA/Reuters/AFLO

 中東の二大大国が激しい火花を散らしている。中東一の産油国として知られるサウジアラビアと、古代ペルシャ時代からの伝統を受け継ぎながら核問題を巡って米国と対立してきたイラン。そのイランが米国と雪解けを果たしたことを機に、中東のパワーバランスに異変が起きている。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が指摘する。

 * * *
 2016年1月3日(日本時間4日)、サウジアラビアの首都リヤドで同国のジュベイル外相が記者会見し、「イランとの外交関係を断絶する」と発表した。2日夜から3日未明にかけて、イランの首都テヘランでデモ隊がサウジアラビア大使館を襲撃し、放火したことが外交関係を断絶した理由だ。このデモが起きた原因は、2日にサウジアラビアが、政府への抗議デモを主導したなどとして、シーア派の指導者のニムル(ナムル)師の死刑を執行したからである。

 1月3日、イラン国営「イランラジオ」は、イランの最高指導者ハメネイ(ハーメネイー)師が、サウジを激しく非難したと報じた。

 しかし、ハメネイ師の発表を額面通りに受け取ることはできない。サウジ国内には、全体で10~15%、イラクとの国境に近い東部には50%近いシーア派住民が居住していると見られる。サウジ王制の打倒を呼びかけるシーア派の暴力的な反体制活動の中心にニムル師がいたことは間違いない。

 ニムル師は、イランのイスラム革命隊の別働隊で、サウジの王制転覆を策動している。サウジ当局がニムル師を危険視したのは当然だ。サウジとイランの国交断絶で「イスラム国」(IS)をめぐる対テロ国際協力にも変化が生じる。ISの台頭によって、シリアが破綻国家化した。シリアに発生した権力の空白をイランが埋めつつある。

 この現実をサウジは何よりも恐れている。サウジにとっては、イランによってISが殲滅され、シリアとイラクにイランの後押しを受けたシーア派の影響力が拡大することの方が脅威なのである。「イランかISかどちらかを選べ」という究極の選択を迫られた場合、シーア派のイランよりもスンニー派のISを選ぶというのがサウジの本音だ。それだから、今後、ISよりもサウジが、国際情勢の撹乱要因になる。

【PROFILE】1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。小誌で半年間にわたって連載した社会学者・橋爪大三郎氏との対談「ふしぎなイスラム教」を大幅に加筆し『あぶない一神教』(小学館新書)と改題し、発売中。

※SAPIO2016年3月号

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