しかし厩舎のスタート時には、1400メートルの思い出深いレースがあります。角居厩舎開業は2001年3月。スカイアンドリュウがすぐに初勝利をもたらしてくれました。3月24日の阪神1600メートルの山陽特別(当時は900万以下)。私の誕生日(28日)の直前でもあり、感慨もひとしおでした。このときの騎乗は和田竜二。私の干支は辰、そして馬名にある「リュウ」。ちょっとした因縁かもしれません。
その後、4月末の朱雀Sを勝ってオープン入り、安田記念の前哨戦といわれるGII京王杯SC(東京・1400メートル)を迎えます。
菊沢隆徳(現調教師)の好騎乗で7番人気ながら2着(1着はGI馬スティンガー)。重賞初勝利をクビ差で逃した悔しさは、15年たった今でもよく覚えています。
スカイアンドリュウはその後故障が判明し、復帰後1戦しただけで引退。馬主さんの尽力もあって種牡馬になり、産駒が地方競馬で勝ち鞍をあげたと聞いています。
このスカイアンドリュウの4つ上の半姉・タニノシスターが2004年に生んだ牝馬がウオッカです。つまり初勝利を挙げてくれた馬の姪が、6年後にダービーを勝ってくれた。先ほど「縁が云々」と書きましたが、こういうところで不思議な縁を感じずにはいられません。
●すみい・かつひこ 1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後14年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。競馬の他、引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者競馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。
※週刊ポスト2016年4月8日号