JSCは審査内容を非公表とする理由についてこう答えた。
「最初から審査委員には“個別の採点結果は公表しない”と伝えていました。各委員に外部から圧力がかかるなどして、今後の会議や審査の公平性が保てなくなる恐れがあるためです」(新国立競技場設置本部)
との回答だった。
昨年12月、政府と東京都は新国立競技場の建設費(最大1581億円)の負担割合で合意。半額の791億円を国が負担し、残りの半分(395億円)ずつを東京都とtoto(スポーツ振興くじ)の収益金で賄う算段になっている。
建設費の負担ばかりでない。新国立は、将来的には国民の共有資産となるのだから、情報公開に応じないのは国民に対する背信行為である。
「このままでは国民の間にある“A案で新国立を建てていいの?”といったわだかまりが解消されません。そんな状態で五輪が気持ちよく迎えられるでしょうか。いま必要なのは、JSCの大東和美・理事長なり、遠藤・五輪相なりが“A案はこれだけ優れているから、大いに期待してください”と国民に胸を張って説明することです。それができないのなら、今一度、A案採用を再撤回するぐらいの覚悟を見せるべきではないでしょうか」(伊東氏)
歴史のある神宮の森に、巨大な「粗大ゴミ」が造られることなど、国民は誰も望んでいない。
※週刊ポスト2016年4月15日号