国内

朝日新聞 「押し紙」問題で公取委からイエローカード

「押し紙」問題で公取委からイエローカード

「蟻の一穴」から巨大な堤防が決壊することがある。新聞・テレビが一切報じない“ある事件”が大新聞社を揺るがし、新聞業界全体を震撼させている。

 3月末、公正取引委員会が朝日新聞に「注意」を行なった。問題視されたのは新聞業界の最大のタブーとされる「押し紙」問題だ。

 押し紙とは、新聞社が販売店に実際の宅配部数以上の新聞を押しつけて買い取らせること。販売店は折り込みチラシの利益で買い手のいない新聞代を支払い、見せかけの公称部数を支えてきた。新聞業界の拡販競争の中で行なわれてきた慣行である。

 だが、押し紙は独占禁止法で禁止されているうえ、発行部数の水増しは広告主に対する詐欺行為にあたるとして問題視されてきた経緯がある。公取委による朝日への「注意」をスクープした元新聞記者で『小説 新聞社販売局』の著書がある作家、幸田泉氏が語る。

「販売店の申告を受けて昨秋ごろから公取委は朝日の社員から事情を聞いていました。朝日の販売店が『新聞の注文部数を減らしたい』と申し入れをしたにもかかわらず、同社の営業社員は考え直せと受け付けてくれなかった。販売店がたまりかねて公取委に申告し、そのやりとりに行き過ぎた言動があったとして朝日が公取委から注意されたのです。

 公取委には独禁法に違反した事業者に排除措置命令を出し、課徴金を課す強大な権限があるが、注意は放置すれば違反につながる恐れがある行為だと指摘するもので、いわばイエローカードにあたる」

 幸田氏がネットメディア「現代ビジネス」でこれを報じると、朝日の押し紙問題はネットを中心に広がり、ホリエモンこと堀江貴文氏は、〈てかこれ完全に詐欺やん。ぜんぜん問題にならないのはそれだけマスコミの力が強いからだけど弱くなったらヤバイよね〉(4月11日)とツイートした。

 新聞業界を驚かせたのもその点だった。公取委が販売店からの訴えを受けて、実際に「独禁法」関連で新聞社を調査するのは異例中の異例。「押し紙摘発」に乗り出す姿勢を見せたことは間違いない(公取委は「個別の案件についてはお答えできません」と回答)。

 これには伏線があった。さる2月15日、杉本和行・公取委委員長は日本記者クラブで行なった記者会見でこう言明している。

「公取委は押し紙を禁止しており、きちんとモニターしているところだ。実態がはっきりすれば必要な措置をとる」

 朝日への「注意」は、その予告通りの動きだったといえる。

※週刊ポスト2016年4月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
入社辞退者が続出しているいなば食品(HPより)
「礼を尽くさないと」いなば食品の社長は入社辞退者に“謝罪行脚”、担当者が明かした「怪文書リリース」が生まれた背景
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
入社辞退者が続出しているいなば食品(HPより)
いなば食品、入社辞退者が憤る内定後の『一般職採用です』告知「ボロ家」よりも許せなかったこと「待遇わからず」「想定していた働き方と全然違う」
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン
ムキムキボディを披露した藤澤五月(Xより)
《ムキムキ筋肉美に思わぬ誤算》グラビア依頼殺到のロコ・ソラーレ藤澤五月選手「すべてお断り」の決断背景
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン