対する昭夫氏の強みは父から受け継いだ強固な「人脈」といわれる。創業者の武雄氏はロッテを大財閥に育てる過程で日韓の政界に食い込んだことで知られる。後ろ楯となったのが日本側では安倍首相の祖父・岸信介元首相、韓国では朴槿恵・大統領の父、朴正熙元大統領だった。

「その父の政界人脈を引き継いだのが弟の昭夫氏でした。韓国では朴大統領の創造経済政策を支え、ソウルに世界5位の123階建ての第2ロッテワールドタワーという複合商業施設の巨大開発を進めている。一方、あまり知られていないが安倍首相とも親密な関係にある」(在日財界人)

 確かに首相動静を調べると、安倍氏とは昨年だけで2度も会談している。11月に帝国ホテルで開かれた昭夫氏の長男の結婚式には、主賓として出席する関係だ。跡目争いで弟の昭夫氏が兄を圧倒している背景には、日韓にまたがる政治力の差も影響しているという。

 武雄氏と宏之氏は業務妨害容疑でグループ経営陣を韓国で「刑事告訴」までしたが、こちらは嫌疑なしで不起訴処分に。兄弟ゲンカが、刑事事件にまで発展する可能性まであるとは怨念の深さに驚かされるばかり。両者の罵り合い、“お口の恋人”とは程遠い。

※週刊ポスト2016年4月29日号

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