すでにアメリカ人も、テレビなどのブラウングッズをはじめとする「キャッシュ・アンド・キャリー」の家電製品(店頭で購入してそのまま持ち帰ることができる家電製品)については価格重視で、ブランドは全く気にしなくなっている。
だから液晶テレビのシェアは、日本では無名のビジオ(VIZIO/アメリカに本社を置く台湾系企業)がサムスンとトップ争いを繰り広げている。あるいは、iPhoneやiPadを使っている人はアップル製だと思っている。実際に作っているのは鴻海精密工業なのに、誰もそんなことは気にしていない。
今や日本の家電メーカーは、いわば韓国勢や中国勢の開発研究所になっているわけで、ボリューム勝負の彼らと競争するには、スイスの高級時計のように値段が取れる付加価値の高いものを作るしかない。
たとえば、イギリスのダイソンのサイクロン掃除機、羽根のない扇風機や空気清浄機能付きファンのような製品である。または、スマホ・セントリック(スマートフォン中心)のエコシステム(生態系)を先取りし、家庭のリビングルームでスマホを中央エンジンにしてテレビやステレオなどの機器をワイヤレスでつなぐ製品だ。しかし、今のところ日本の家電メーカーからそういう画期的な製品は、いっこうに出てこない。
※週刊ポスト2016年7月15日号