私は1000勝を目標とし、自分自身を奮い立たせていますが、きっとイチローさんも同じだと思うんです。野球界では既にレジェンドであることに疑いようがない彼は、誰かから「続けろ!」と言われているわけではないのに、40歳を過ぎても体をいじめて現役を続けている。明確な目標が彼を奮い立たせているのだと思う。
彼は記者会見で、「子供の頃から、人に笑われてきたことを常に達成してきた自負はある」と話していましたね。メジャー挑戦の前には、「アメリカでは通用しない」と笑う人もいたでしょう。言葉も環境も違う異国の地で、人知れず悔しい思いもしたはず。それでも一生懸命努力し続けて、イチローさんは世界一になった。
その後、前記録保持者のピート・ローズ氏や一部メディアから、「日米通算」だからこの記録は認められない、という声が出ました。そんな心ない声にイチローさんは傷ついたと思う。私はイチローさんの気持ちがわかる。なぜなら、私も同じ立場にいるからです。
大鵬関の優勝記録を超えたにもかかわらず、私の記録は「認められない」という人もいました。相撲は勝負の世界でありながら、伝統文化の側面もあり、ただ勝てばいいわけではない。
外国人に対する風当たりが強くなることがあり、時にバッシングに変わることもある。
●撮影/ヤナガワゴーッ!
※週刊ポスト2016年7月22・29日号