次に生まれた「お化けドラマ」は、2013年の『半沢直樹』(TBS)。最高視聴率は42.2 %と、ミタを凌駕して世の関心を掴んだ傑作。銀行員の半沢直樹が、組織に潜む敵と対峙し格闘しながら正義をもぎとっていくストーリー。発端は、小さなねじ工場の経営者だった父が、銀行から融資を止められて自殺した出来事にありました。
利益追求を目的にした集合体=企業という組織の中で、いかに人間らしい生き方を取り戻していけるのか。そんな問いかけが視聴者の胸に響いた。そう、このドラマのテーマは「企業・組織の再生」。
ではその2013年の出来事を振り返ると──桜宮高バスケ部体罰自殺事件、柔道界暴力指導で選手が告発、大津いじめ自殺事件……組織の中で苦しむ個人の姿が浮き彫りになった年でもありました。
「家族の再生」(ミタ)。
「組織の再生」(半沢直樹)。
今年は「カップルの再生」(逃げ恥)へ。
ドラマは多くの人々の思いをぎゅっと集めた娯楽。自分が果たせなかった思い、思い通りにならなかった想いも含めて物語の中に見てとり、共感したり考えたりしながら味わう娯楽です。それは、世の中を映し出す鏡の要素も持っているのでしょう。
では来年は? いったいどんなテーマをひっさげたドラマが現れてくるのか。ドラマの中にどんな社会の姿が見えてくるか?
いずれにせよスマホにSNSとコミュニケーションは細分化し個人化し、共通の話題が持ちにくい時代は続く。だからこそ、「共通テーマ」としてのドラマの存在感は高まっていく、そう言えるのかもしれません。