こうした協会をあげての後押しに対して、反発を抱いていたとみられるのが横綱・白鵬だ。それは千秋楽の結びの一番を前にした支度部屋の様子から伝わってきたという。若手親方の一人がいう。
「白鵬は付け人相手にしきりに左四つで組む立ち合いの稽古をしていたんです」
白鵬が得意なのは右四つで、左四つが得意な稀勢の里とは、いわゆる「ケンカ四つ」になる。そのなかで、あえて稀勢の里に有利な体勢のシミュレーションをしていたのである。
「相手の得意な左四つに組んだ上で、電車道で稀勢を土俵下に叩き落として格の違いを見せつけるつもりだったのでしょう。白鵬との一番を待たずに協会も横審も昇進ムードだったので、“協会に恥をかかせてやる”と周囲に意気込んでいた」(同前)
実際、白鵬は立ち合いから左四つで一直線に押し込んだが、土俵際ですくい投げを食って敗れた。
「ガチンコでぶつかり合って、逆にねじ伏せられた。取組前の意気込みが空振りに終わり、かえって白鵬の力の衰えを感じさせる一番となりました」(同前)
※週刊ポスト2017年2月10日号