第二次世界大戦で日本はアメリカと太平洋地域で熾烈な戦いを繰り広げたが、アメリカ本土には迷惑をかけていない。一方、韓国は植民地にして本土に迷惑をかけたことは間違いない。安倍首相が「和解の力」を本当に信じているのであれば、大統領がスキャンダルで職務停止になって死ぬほど恥ずかしい思いをしている韓国に対し、10億円払ったのだから日韓合意の約束を守れ、と迫って傷口に塩を塗るのは言葉と行動が違うことになる。

 アメリカには僕のように隷従し、韓国には居丈高な態度を取る。アメリカは尊敬・信頼できるが、韓国は尊敬も信頼もできないという、ある種の「偏見」が見え隠れする。

 しかし、アメリカは「和解の力」など信じていない。その証拠に、今もアメリカは首都圏に米海軍横須賀基地と米空軍横田基地を保持している。なぜ戦後70年以上経っても首都圏に米軍基地があるのか?

 占領していた当時、アメリカは「日本は、また我々に歯向かうかもしれない」と考えていたからだ。米ソ冷戦時代、ソ連に対峙するなら基地は北海道や東北、北陸に移したほうがよかったはずなのに、横須賀と横田は手放そうとしなかった。日本も返還要求をしていない。

 また、沖縄についてもアメリカは「民政」を返しただけで「軍政」は返していないという“事実”を認識すべきである。だから昨年12月に輸送機オスプレイが空中給油訓練中の事故で墜落した時も、わずか6日後に空中給油訓練を除く運用を再開し、1か月足らずで空中給油訓練も再開した。日本政府は事故直後、在日米軍にオスプレイの飛行停止を要請したが、それはあくまでも建前であり、アメリカは全く意に介していないのだ。

 要するに、日本とアメリカの関係は「和解の力」どころか、まだ戦後の植民地支配が実質的には終わっていないのである。これは両国政府の間で“合意事項”になっているのだが、そのことを日本政府は国民に説明していない。

 この問題を含め、日本の指導者は日本が「真の独立国家」になるために、ビジネスライクなトランプ政権誕生を奇貨として、対アメリカをはじめとする外交関係を“棚卸し”すべきだと思うのである。

※SAPIO2017年3月号

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