生まれた環境、どういったチームで野球をやってきたかによって、投手が持つ資質は大きく異なる。人によっては合わないコーチがいるのも仕方がない。それを踏まえた上で、より良い環境作りに徹しているのだ。
「コンディショニングは本人にしかわからない。我々ができることは試合で何球に抑えるか、試合の登板間隔をどれだけ空けるかで、あとは普段のコミュニケーション、練習の取り組み方を見るしかない。
選手が無理するのをどう判断するか。言ってしまえば、ちょっとの怪我くらいで休む選手はいい選手じゃない。難しいところですが、怪我を恐れてリスクを回避しているようでは、良い結果なんか出せるわけないです」
自身の現役のことを指しているかのように、みんなリスクを背負っている中で力を出し切ることがプロとしての使命だと力説する。強靱な肉体を作って、怪我をせず、良いパフォーマンスを見せることがベストな選手なんだと伊藤は訴える。
「僕の現役時代は、やれる範囲であればやっていたし、それで怪我をしてもしょうがないかなと思って投げていました。怪我を恐れることで本来のパフォーマンスが出せないならやっている意味もないなと。
現役時代は、球数を何球投げるかよりも何イニングス投げるかが重要で、リリーフはいましたけど、中継ぎが3人も4人もおらず、先発完投が当たり前の時代でした。僕だけじゃなく200球近く投げているピッチャーは他にもいて、そういうピッチャーたちが30前後で早々に引退していくっていうのが普通でしたから。
今は、できるだけ選手寿命を伸ばして長く実戦で活躍できる環境を作ることが優先される恵まれた時代だと思う。でも僕たちが生きたあの時代も、1つの大切なプロ野球の歴史なんだと思いますね」