ある子は思いをしっかり受け止め、またある子は首を大きく横に傾けている。この子は育つと発破をかければ、何で私ばかり注意?褒めて欲しいと嘆かれる。またマイナス志向の子に前向きなアドバイスをすれば、一緒に落ち込んで欲しかった…なんて呟かれたり。この子にはこう!みたいな、見抜く力の鈍さにもほとほと疲れたりもした。

 お子さんを持つお母さん達がよく、同じように育てたのに全く性格が違うのよね~なんて仰る気持ちも大いにわかった。生まれ持つ性格、そしてまたそこに付属的に存在するのが互いの相性だから尚更だ。

 かくいう私も下級生だった時“新人類”という、いかにも遭遇したことのない惑星からの訪問者というネーミングで、世間を賑わした時代の若者だった。そして私が新人類だったころ、ある上級生の方のメイクがすごく素敵だったので、その方のブロマイドを購入し、とにかく彼女と同じようなメークを日夜勉強していた。

 そしてある日、その先輩に「お使いになってるドーランの番号を教えてくださいますか?」と、どうしてもわからなかった地肌となる美しい色を知りたく私は勇気をだし尋ねた。すると「あなた、真矢みきだよね、じゃ教えてあげるね、そんなん聞くの100年早いわ!」といわれてかなりショックを受けた経験がある。

 簡単に聞いてはいけないものなのだと鈍感な私もズバッと深く分かった日だった。しかし時は経ち、その苦い言葉は形を変えた。“自分に合うメイクは自分で試行錯誤してから人に聞くものだって、真矢みきには気づかせたいんだ。あの子の個性は大切に育てないとね”と先輩がいわれていた、と人伝えに私は聞いた。その先輩はその後、退団されていく日に、あの時質問したドーランを私の化粧前にそっと置いていかれた。

 厳しさと温かさ。いつの時代もいくつになっても、この対照的な言葉は一つのセットなのかも知れない。

 上質な上司に出会えば人生は豊かだ。それはいつまでも心のひだに染み入る温かさだ。 「感謝(孝行)したいときには、親はなし」ならぬ「感謝したいときに上司は会社におらず」なのだ。

『理想の上司』

 この言葉は永遠に探したい先輩であり、また自分もいつか誰かの…と己を奮い立たすテーマなのかも知れない。

撮影/渡辺達生

※女性セブン2017年3月16日号

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