石川県でどぶろく造りをしながら冬季限定で農家レストランも営む夫婦や、少年時代の夢を追いかけて薪ストーブ職人になった夫とそれを支える妻など、どの人もうらやましいかぎりのセカンドライフ。ただし、番組では“その先”は描かれていない。
本誌・女性セブンが調べてみると、実はせっかく始めた「第二の人生」からひっそりと手を引いている人も少なくなかった。店や旅館などを閉めていたり、ブログの更新が止まり、電話がつながらなくなっているところも…。なかには経営している宿泊施設を、「別の人にゆずりたい」と発言している人もいた。
『笑顔育む木曽馬の楽園』として2009年に同番組に出演した『吉良の赤馬牧場』の河井弘康さん(69才)、裕子さん(70才)夫婦も2015年に牧場を閉鎖し、第二の人生に幕を引いていた。“楽園”でいったい何が起きたのか…。
◆「まるで昔の彼女に再会したような気持ち」
弘康さんが馬に興味を持ったのは、高校3年生のとき。
「農業高校だったので、北海道に酪農実習に行ったんです。裸馬で走る先輩の姿が、格好よくて、うらやましくて。ぼくも何日か馬に乗せてもらって、すごくうれしくて、“馬と一緒に暮らせたらいいな”と思ったことをよく覚えています」
しかし、その後、進学・就職と人生のコマを進めるうちにいつしか馬のことは忘れ、妻子のため、公務員として忙しく働く日々が続いた。
「だけど35才の時に家族で『木曽馬トレッキングセンター』に行ったとき、“やりたかったことはこれだ!”って感動したんです。女房はいるけれど、まるで昔の彼女と再会したように、胸がドキドキと高鳴りました(笑い)」
それからは週末の休みを利用して地元・愛知県から長野県まで通い、乗馬や馬の扱い方を教えてもらう日々が始まる。
「基礎的なことから教えてもらって、乗れるようになったのが40才くらい。この頃から、“仕事を辞めて、牧場を始めようかな”と思っていたんです。だけど子供がまだ学生だったし、財産なんてなかったから、がまんしました。子供が就職して給料をもらうようになったら、好きにやらせてもらおうと、心の中で決めていました」
シニア向け宿泊予約サービスを提供する『株式会社ゆこゆこ』が行った「第二の人生に関する調査」を見ると、「今、第二の人生が始まっていると思う」と答えたのは、70代以上が92.5%、60代が78.6%であるのに対して、50代は28.7%だった。
弘康さんもまた、50代のうちは決心がつかなかった。