なぜ、患者の状態を改善するはずの薬が逆にリスクを生むのか。まず指摘されるのは、「服用する薬の種類が増えれば、それだけ副作用のリスクも増える」という理由だ。
「高齢者は肝臓や腎臓の機能が衰えて薬が体内で代謝されにくく、血液中の薬物濃度が上がります。本来、高齢者の薬の量は成人の2分の1から3分の1に減らすべきですが、実際は若い人と同じ量が処方されている。そのため、副作用に悩まされるケースが見られます」(高瀬医師)
続いての理由は、薬の「飲み合わせ」だ。複数の薬を服用すると、体内を循環する過程で薬同士が作用を打ち消し合い、薬効が抑えられてしまうことがある。あるいは逆に作用が重なって、過剰な副作用が生じることがある。
「こうした薬効の増強や減弱などは『薬の相互作用』と呼ばれます。当然、多くの薬を飲むほど相互作用が生じやすく、人体に悪影響をもたらすリスクが高まります」(高瀬医師)
厚労省が2014年12月の診療データを集計したところ、75歳以上の患者の20.2%が10~14種類の薬を服用しており、15種類以上という患者も何と7.1%いた。75歳以上のほぼ3割は、「薬」が「毒」に変わってしまっているリスクを抱えているといえる。
※週刊ポスト2017年8月11日号