夏場の平均気温が1℃上がるごとに販売数量が1日80万本(大瓶換算)増えると言われるビール。7月中旬から下旬にかけての猛暑で前年比およそ3割増を記録した各社は意気込んで増産を決めたが、まさかの冷夏でアテは外れた。
代わりに躍進したのが「日本酒」だ。例年、夏場は売れ行きが鈍化するが、都内の日本酒卸業者は笑顔で話す。
「気温が下がると、『1杯目のビール』の代わりに、『1杯目から日本酒』を頼む人が増える。そのため、今年は昨年8月よりも2割ほど日本酒が多く出ている印象です」
ビールの売り上げ減少は食べ物の売り上げにも影響する。
「コンビニのレジ横にある唐揚げチキンなどの“ビールのお供”の売り上げも一緒に減少します」(都内のコンビニ店長)
代わりに売れているのが、季節外れにも思える「おでん」だ。
「コンビニは“旬”の売り上げを最大化するために、季節を前倒しして商品を販売し、顧客に印象づける。11月からの本格シーズンに向けて8月から販売を開始するおでんは、例年この時期には“何でこんなに暑いのにおでんなんだ”と敬遠されますが、今年は売れている。
コンビニの商品は“急な体感温度の変化”で売り上げが伸びるといわれます。寒暖の差が激しく、急に肌寒さを感じることの多い冷夏におでんの熱さがマッチしたのでしょう」(流通ジャーナリストの渡辺広明氏)