高須:たまに「手術をするな」とか「がんと戦うな」みたいなことを言うお医者さんがいるけど、僕にはまったく理解できない。最初っから「戦うな」っていうのは、完全に治療を放棄しているのと同じだと思う。
もちろん、戦っても結果が出ないがんもある。再発がんだったら、なかなか抗がん剤も効かないし、効果的な治療法を見つけるのは難しいし、それが患者の負担になることもあるのもわかる。でも、だからといって「戦わない」という選択肢を選ぶ意味がわからない。そもそも治療しなければ治らないのに、どうして治療をしようとしないのか? もはや治す努力を怠っているとしか思えない。そんな医者は信用できないよ。
それにいわゆる「民間療法」と呼ばれるものは、決して科学的に正しいものではないということを知っておくべきだと思う。民間療法は、科学でも医学でもなくて、宗教だと思っていたほうがいい。そういう認識がないから、民間療法に助けを求めてしまうんだよ。
そして、病気になったら、しっかり知識を持っている医者に診てもらうことが何よりも重要。どういう治療法があって、どんなリスクがあって、どれくらいの確率で治るのかとか、そういうデータを示してくれる医者であれば安心だし、そこからヘンな民間療法のほうに行ってしまうことはないからね。だから、もしも病気になったときのために、信じられる医者を見つけておく努力はしたほうがいいと思う。いざというときに、病気を治してくれるのは宗教ではなく医療。そこだけは間違いないよ。
──番組の最後には、医学の進歩で“神の領域”を侵すことの是非についても議論されていました。
高須:科学の世界は、常に未知のものを探究して、新しい真実を見つけていくもの。だから、可能性は無限にあるんだよ。でも、「この先は行ってはいけない」と領域を定めるのは宗教の世界。僕は医者であって僧侶でもあるから、両方の考え方を持っているんだけど、そこは完全に使い分けている。医者である以上、医療の分野では絶対に限界を設けない。神の領域だろうがなんだろうが、そこを切り拓いていくのが科学なんだからね。